第112話恐らく空耳か何かでしょう

しかしながらそんな妹もそれはそれで可愛いのでこのままでいて欲しいと思うのはわたくしのエゴなのであろうか?


そんな事を思いつつ、わたくしはきたる挙式の事を想像して過ごす。


皆に祝福されるような、そんな挙式にしたいと思うものの本番当日が刻一刻と近づくにつれ緊張感が増していきマイナスな事ばかり考えてしまう。


もし段取りを間違えてクロード殿下に恥をかかせてしまった日には一生顔を向ける事ができないと確信できる。


「どうしましょう、シャルロット………わたくしちゃんとできますでしょうか?」


そして挙式まであと二週間といった所で遂にわたくしはシャルロットに泣きついてしまう。


これは旅行で出来てしまったわたくしの悪い癖であると、一国の妃となるのだからこの様なみっともない癖は直すべきであると分かってはいるものの一回甘えるといういう行為を覚えてしまっては、知らなかった以前の様に振るまう事等できようはずがない。


「大丈夫ですわ、リーシャ様。きっとクロード殿下であるのならばどのような失態をしてしまったとしてもお変わりなく愛してくれますわ」

「そ、そうでしょうか?」

「断言出来ます」

「あ、ありがとうございます。そう力強く言ってくれたら何だか大丈夫な気がして来ましたわ!………あれ?わたくしが何かしらの失態をする体で話してません?」

「気のせいでございますわ。この私がその様な事を想定する等ありえませんわね。リーシャ様はいつも完璧でらっしゃいます」

「あら、なら良いのですけれども」


(クロード殿下が側にいない場合のお話でございますけれども)


「………?何か言いましたか?」

「いいえ何も。恐らく空耳か何かでしょう」


そしてわたくしはシャルロットにいつもの様にほんの少しの勇気を貰うと、廊下の方が慌ただしくなり、勢いよくわたくし達がいる部屋がノックされるので何事かと警戒しながらも入室の許可を出す。


「し、失礼いたしますっ!!また、無作法につきましては───」

「その件につきましては謝らなくて結構ですわ。緊急の要件なのでしょう?ならば必要なのは作法どうこうではなくその情報の内容でなくて?作法など気にせず申してくださいな」

「あ、ありがとうございますっ!!じ、実はクロード殿下の計らいにより挙式の後に披露宴という催しをするそうで、決定事項として既に周りが動いておりますっ!!そ、そしてその披露宴の内容をリーシャ様に考えて頂きたいとの事だそうですっ!!」

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