第69話【断罪編】警告を聞き入れる事が無かった

そう、私が今ここにいるのはクロード殿下とイチャイチャする為ではない。


今目の前にいる下々達へ私がクロード殿下と結婚すると言う事実を宣言し、誰が次の王妃であるかということを明確にするためである。


次の王妃はリーシャではなく私であると。


そして私は声高々に、今一度宣言する。


次なる王妃は私であると。


そして語る。


クロード殿下との馴れ初めを。


「クロード殿下との初対面は────」

「今一度言う。お主は今ここで何をしている?貴族界の常識が無いのであろうとかなり大目にみているのだが、これ以上は流石の我も我慢の限界に来ておるぞ?あぁ、お主は人の言葉が分からぬ発情した雌猿であったか。なら人の言葉が分からぬのも仕方ないが、だからと言って猿がここにいていい場所ではない。いい加減立場を弁えよ。これも幾度となくお主に申してきた言葉であるのだがな、ついに最後までお主はその警告を聞き入れる事が無かったな」


そして王妃となる決意を胸に言葉を発したその時、私の言葉はクロード殿下の明確なる怒りの視線とその声音によって遮られてしまう。


「く、クロード殿下………?一体何を言って………いるのですか?は、恥ずかしがらなくても良いんですよ?」

「何を恥ずかしがると言うのだ?今恥ずかしがるべきなのはどう考えてもお主しかおらぬであろう。我の妻となる?お主が?勘違いも甚だしい。そもそも、次期国王の妻であるぞ。婚約一つをとっても様々な事、それこそ処女か処女でないかの確認から血筋の確認、家柄とその歴史に貢献度、更にはそれら書類へのサイン、婚約を果たす家に近しい周辺貴族への挨拶周り等々。お主とはそれら一つとして行っておらぬと言うのに婚約をすっ飛ばして婚姻?無知にも程があるだろう?それになんだ?お主は簡単に男性と寝るそうではないか。そんな、誰の子を孕むか分からない様な発情した雌猿等第二夫人どころか愛妾にすら出来ぬわ」


クロード殿下は一体何を言っているのだろうか?きっと何かの間違いである。そうだ。そうに違いない。だって手紙を渡す時の殿下はあんなにも笑顔だったのだもの。


「わ、私の手紙を受け取った時の、私に笑顔を向けてくれたクロード殿下は演技だったというのですかっ!そんなの嘘ですっ!演技であんなにも愛おしそうな表情等作れる筈がありませんっ!!それに私は発情した雌猿というのも真っ赤な嘘ですっ!!騙されないでくださいクロード殿下っ!!私は強姦未遂をされた被害者なのですっ!そして未遂で終わっておりますので私の身体は清いままでございますっ!!これは恐らく私と殿下の恋路を妬ましく思うリーシャの仕業でしょうっ!!けして騙されてはいけませんっ!!」

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