第52話人が変わった様に

しかしアルビンは納得していないのかクロード殿下達が退室していった後も喚き散らし、既に剥奪されている宰相という肩書を口にして脅しにもならない脅し文句を使い、拘束している騎士に解放しろと喚き散らしていた。


そしてそんなアルビンに対して騎士がアルビンの言う事を聞く訳も無く腹を一発殴り黙らした後、もがき苦しむアルビンに構わず手首に巻かれたロープを引っ張り、引き摺りながらクロード殿下達が退室して行った扉とは反対方向の扉へと、それでもなお喚き散らしながら連れて行かれていった。


その姿を見た貴族達は今日の仕事が終わったとばかりに口々に『アルビンはあそこまで馬鹿であったのか』『それに比べてクロード殿下は将来有望ですな。王国の未来は明るい』等という会話を弾ませながらぞろぞろと退室していった。


そして残ったアルビンの親族である者達も重い空気を漂わせ、しかし安堵の表情をしながら一人、また一人と退室して行き、気が付くと部屋に今残っているのは俺の母上と妹と俺の三名だけになった。


「お兄様」

「……………何だ?」

「私、クロード殿下の役に立つ仕事につきたい」

「側仕えの仕事か?」

「そうです」

「こんな事が起きたのだ。その気持ちはわからないでも無いが諦めるのが賢明であろう」

「………例え、側仕えになれなかったとしても城内の清掃を主な仕事としているメイド に成れるかも知れない。それがダメでも城に仕えている者達の食事を作る事を主な仕事にしているメイドに成れるかも知れない。何でも良い。間接的でも良い。私はクロード殿下に関わる仕事がしたい」


そう言う妹の目はアルビンが捕まってから見せる様になった、まるで全てを諦めたかの様な目では無く、今まで見た事も無い力強さが宿っていた。


そして、この日を境に妹は人が変わった様に勉強に励み始めた。


その姿からは、つい最近まで我がままで勉強嫌いであったと言われても誰も信じてくれないであろう。


そして、俺は妹のその姿を見て長男として何か仕事を探さないとと立ち直り始めた時、クロード殿下から登城する旨のお達しが届いた。


考えられる事は一つ。


学園でクロード殿下の側で仕えるという任を解く為に正式な手続きを行う為であろう。


「…………………今、何と仰ったのですか?クロード殿下。誠に失礼ながら今一度先程クロード殿下が申した事を仰っては頂けないでしょうか?」


しかし、いざ登城してみるとクロード殿下の口から出た言葉は全く想像していなかった内容の為不敬と知りつつも聞き返してしまう。

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