第45話平等

そして、そんな俺の態度にオルガンが珍しく反抗し、アルキネスが怒りを隠す素振りも見せず睨み付けてくる。


「ほう………?言いたいことはそれだけか?オルガン」


そんな彼らを俺は一瞥した後オルガンへ聞き返す。


「そ、それだけかってっ!?クロード殿下は何も思わないのですかっ!!」

「思わんな。むしろ、貴様は何も思わんのか?」

「思うに決まっているじゃないですかっ!!思うからこそこうしてクロード殿下へ苦言を申しているのですっ!!」


実に、実に平和ボケた考えであると言わざるをえない。


今まで何不自由なく暮らしてきて、何不自由なく魔術の勉強と練習ができ、それを当たり前であると思っているのであろう。


平等という事がいかに恐ろしい事であるか、正しく解釈し使用しなければ猛毒であるとこの者達は気付けていないようである。


「そうか。ならば貴様は今日から俺の護衛の任を解こう」

「なっ!?何故そうなるのですかっ!?クロード殿下っ!それは余りにも横暴すぎるっ!!」

「何故だ?貴様がそう言うのであればまず貴様がその平等とやらの恩恵を受けるべきであろう。違うか?」

「一体何を申されているのですかっ!?クロード殿下」


ここまで言っても分からぬとは、実に愚かであると言わざるを得ないのだが、俺の前世でもその恐ろしさに気付けない者が大半であるという事も踏まえて、一度だけチャンスを与えるつもりではあるもののこの態度では厳しいだろう。


「分からぬか?平等、それは実に耳触りの良い言葉であろう。だが、故に正しく解釈をして扱わねば猛毒となりうる」


俺は、平等は区別して初めて成り立つことを知っている。


何故ならば人間生まれた時から皆違うからである。


親が違えば性別も違う。

人種も違えば考え方も違う。

運動能力も違えば魔力保有量も違う。

美形もいればそうでない者もいる。


この世に同じ人間など一人たりともいない。


なのに区別せずに皆平等だとした場合大きな歪みが生まれてくるのは道理であろう。


力は無いが魔力保有量の多いエルフと力はあるが魔力保有量の少ない獣人がこの世界にはいるのだが、オルガンが言っている事はエルフに対して獣人の様な力仕事をしろ、獣人に対してエルフの様な魔力を多く消費する仕事をしろと言うようなものである。


先に区別し適材適所で正しく人材を派遣し、その上で給料等の雇用面を平等にするべきなのである。


そして何より恐ろしいのが、この学園を小さな国と考えた場合である。


俺は平等共産主義がどれ程の人間の命を奪って来たのかを前世の知識として知っている。

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