第38話私の王子様

最終目標はクロード殿下を落とす事。


それは変わらない。


クロード殿下も男なのだ。


一回寝てしまえば一発であろう。


しかも王族、それも王太子である為世継ぎ問題が起こらない様に見張られて未だに童貞であろう。


で、あるならばカモがネギを背負ってくる様なものである。


もし、一回寝て落とせなかったとしても今まで通り寝た事をネタに揺すぶりをかければスキャンダルというリスクに罪悪感という感情がクロード殿下の首に首輪をつけてくれるだろう。


チョロいものである。


そして私はアルビンに聞かされたクロード殿下を取り巻く環境を頭の中で復習する。


この復習は何度やったか分からないほどイメージしてきた。


アルビンがわざわざ作ってくれたクロード殿下を取り巻く環境、それは幼い頃よりクロード殿下を決して褒めないという事であった。


更に婚約者は幼い頃より厳しい教育の元で育ち、融通の効かない人間になっているだろうと推測した。ここ数日二人のやり取りを盗み見る限り、このリーシャとか言うクロード殿下の婚約者は私の想像していた通り、いやそれ以上に融通の効かない人間に育っていた。


常にクロード殿下を睨みつけ、口元は扇子で隠し、クロード殿下の言う事を頭ごなしに否定していく。


その光景を見た瞬間、私がグラデアス王国の次の王妃となる姿が鮮明に脳裏に映った。


あぁ、やっぱりクロード殿下は私の王子様であった。


この、クソったれた世界から救い出してくれる紛うことなき、正真正銘の王子様、私だけの王子様だったのだ。


そんな事を考えながら廊下を歩いていると奥の方から愛しい愛しい私の王子様であるクロード殿下が歩いてきているのが見えた。


しかもクロード殿下は何やら考え事をしているようで注意力が散漫になっている様である。


この千載一遇のチャンスを逃す手はないと、早速私はクロード殿下へとぶつかりに行く。


「きゃっ!?」

「おっと、すまない。考え事をしていて意識が散漫になっていたみたいで……あ………る」

「わ、わわわわ、私の方こそごめんなさいっ!!よそ見していたのはこちらも同じですからお気になさらずにっ!!」


そして私はクロード殿下の胸元へとぶつかると、まるでウブな街娘の様な反応をし、クロード殿下へ上目目線で申し訳ない様に見つめたあと、至近距離で見るクロード殿下の美貌に息を飲み固まってしまいそうになるのを気力で防ぎ、これ以上は危ないと離脱する。


「私の王子様………」


そして私は廊下の角を曲がった所で、熱の籠もった声で呟くのであった。

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