第20話先延ばしにしていい問題ではない
そんな光景を目にして私は許せるはずが無かった。
私の、いや、全ての貴族淑女の初恋の殿方であるのだ。
どれだけの淑女がクロード殿下の婚約者になれる事を夢見て日々妄想に耽っていたことか。
淑女たれという厳しい授業の数々ももしかすればクロード殿下の婚約者になれるかもしれないという淡い希望を持てたからこそ心折れずに皆頑張れて来れたのである。
であるにも関わらずあのリーシャ様という令嬢はクロード殿下を罵っているではございませんか。
私は、悔しくて仕方が無かった。
なまじ、侯爵家とリーシャ様よりかは一つ格下ではあるものの、家柄は申し分ない上に、ひい爺様が国王である為王族の血も引いているのだ。
血が濃くなる為定期的に血のつながらない家系から娶らなければならないという事は理解しているのだが、もしその周期、外から娶る周期が次代の王であるクロード殿下では無い場合は、クロード殿下の婚約者は私であったと言っても過言ではないだろう。
そしてその周期は国王にしか分からない為、私は婚約者が決まる歳まで本気でクロード殿下の婚約者になれると疑いすらしなかった。
何故なら二代前の国王であり私のひいおじい様でもある元十一代目国王が娶った女性が血のつながらない外部の者であったからである。
今までの歴史上、基本的には早くとも三代から四代離れたら外部からの血を入れており、こんなに早く外部からの血を王家に入れる事など無かったのだ。
自分がクロード殿下の婚約者になれるかもしれないと思った私は調べたのだ。
不安を払拭する為に、私がクロード殿下の婚約者になる確率が高いと安心したいが為に。
しかしそんな私の想いをあざ笑うかの様にクロード殿下の婚約者はリーシャ様が選ばれたのである。
こんな私の気持ちなど、クロード殿下の婚約者になれなかった淑女の気持ちなど、リーシャ様は知らない。知ろうともしない。
であるのならば思い知らせてあげましてよ。
◆
リーシャが自分の力で解決すると言ったのだ。
あのリーシャがである。
つい最近まであんなにも小さく幼い、まだまだ子供だと思っていたのだが子供の成長は早いものであると、現世での自分の年齢は棚に上げてしみじみと思う。
何度か心配で陰から覗く分には、無視されているとはいうもののそこは平民ではなく蝶よ花よと育てられた貴族令嬢故にしっかりとあいさつはしていたりするため今すぐにどうこうする必要もないだろう。
しかし、リーシャが一人で頑張っている事には変わりない為、だからこそ俺もそろそろニーナの件をどうにかしなければなと思う。
いつまでも先延ばしにしていい問題ではない事くらいは分かっているのだが献身的に働いてくれるニーナについつい甘えてしまっていたのであろう。
数少ない、決して裏切らないと分かっている存在であった事も大きい。
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