第17話有り難いお言葉
このままではクロード殿下に嫌われてしまうという不安と危機感から毎朝クロード殿下の写真を相手にこうして練習をしているのだが一向に良くなる気配を見せず、寧ろ日に日悪くなっていっている気がするのだが気のせいであろうか?
寧ろ練習していたからこそ今の現状でなんとか落ち着いているのである。もし毎朝の練習が無ければ今頃はクロード殿下と顔を合わせただけで失神してしまう程悪化しているのかもしれないのだ。
そう思えば毎朝の練習も無駄では無いという事である。
そしてわたくしはふんすと鼻息荒く、無くなりかけていたやる気を絞り出す。
何事も継続は力なりである。
「お姉様、そんな調子だと私がクロード殿下を奪っちゃうからね?婚約してるんだから好きの言葉一つや二つ言う事など今更でしょうに、何がそんなに恥ずかしいのか」
「そ、それはわたくしも分かってはいるのですけどいざ殿下を前にすると何故か気持ちとは正反対の言葉を言ってしまうのですからわたくしも困っているのですわ。だからこうして毎日クロード殿下の写真を前にして練習しているんですのよ」
昔は、その内容は違えど口を開けば互いに互が嫌な気分になる様な言葉を言っていたのだが今では普通の姉妹の様に話を出来る様にまで、妹との距離は縮まっている様に思う。
妹は妹でわたくしに劣等感を抱いていた事を知ってびっくりしたものである。
しかし、あの我儘に育った妹がここまで大人しくなるとは意外である。
「あ、良い事を思いついたお姉様っ!」
そんな事を思っていると妹がそんな事を言ってきた。
そしてわたくしは知っている。
この妹が言う『良い事』が決して良い事ではない事を、今までの経験から知っている。
「面と向かって話せないのであれば手紙にすれば良いんじゃ無いの?」
「そ」
「………そ?」
「それですわぁっ!」
わたくしの妹も偶には良い事を言うものである。
そうと決まれば善は急げという訳で───
「リーシャさん、わたくしも今まで厳しくし過ぎて来たと思いますので完璧な令嬢ではなくリーシャらしく淑女然とした大人へ育ってくれさえすれば何も言わないのですけれども、いきなり大声で叫ぶというのは些か淑女という枠組みから大きく遺脱しているのでは無いかと、わたくし思うのですけれども?」
「お、お母様………?」
そしてわたくしはこの後みっちりとお母様から説教もとい淑女とは何たるかという有り難いお言葉を頂く羽目になったのであった。
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