第13話 実家では……



 ――――一方、ウェルズリー公爵領。


「リートが騎士になっただと!?」


 リートの父、ウェルズリー公爵の元に「リートが近衛騎士になり、第七位階を得た」というニュースが飛び込んできた。


「なんの間違いだ。あいつはクラスさえ持たない無能だ。それなのに近衛騎士? いきなり第七位階だと?」


 激昂して唾を飛ばす公爵。

 知らせを持ってきた従者は、恐る恐る聞いた話をそのまま伝える。


「なんでもイリス王女に気に入られたとかで……」


「王女様……だと? なぜだ…… 何があった……?」


「なんでも聖騎士のスキルを使い、試験で王女様の目に止まったとのこと」


「聖騎士のスキルだと? バカな。そんなことありえん。何かイカサマをしたに違いない」


 話を一緒に聞いていたカイト――リートの異母兄弟にして、現在のウェルズリー公爵家の跡取り――も、兄の出世話に鼻息を荒くする。


「第七位階というと、オレよりも上ですよ!」


 聖騎士クラスを得たリートの異母兄弟であるカイトは、無試験で東方騎士団に採用された。


 しかし聖騎士という超レアクラスを持っているカイトでさえ、キャリアは最下層の第九位階(ナインス)からのスタートだ。

 それなのに、クラスさえ持たないリートが第七位階に叙せられるというのは、カイトには到底受け入られないことだった。


「――だが、待て。焦るな。決闘会がある」


 公爵は息子と、そして自分自身にそう言い聞かせる。


 決闘会は、騎士になって五年目以下の騎士が競い合う行事だ。

 優勝すれば、無条件で第七位階に出世できるという特典がある。


「のちに騎士団長になった人物は、ほとんどが決闘会で優勝している。かつての私もこの大会で一足とびに第七位階になったのだ」


 と、父親は息子に鼻息荒く言った。


「聖騎士のクラスを持つお前なら、必ず優勝できる。絶対に優勝して第七位階まで出世するんだ」


「はい、父上ッ!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る