第11話 近衛騎士最強の男との対決
†
「ええ、わかりました……」
ウルスからの“手合わせ”の申し出に、リートは緊張しながらうなづく。
“近衛騎士団最強”の実力に、恐ろしさを感じたのも事実だったが、同時にどれほど強いのか知りたい、そして自分の力がどれだけ通用するか試してみたいと思った。
ウルスが手合わせのルールを説明する。
「お互い剣士だ。純粋な剣技で戦おう。常時発動スキル以外は使わない。もちろん加護の指輪は装備する」
「わかりました」
リートが頷くと、他の騎士たちは二人から距離を置いた。
「では私が合図をする」
イリスがそう申し出る。
「では行くぞ――」
リートは全身の力を抜き、自然体で剣を構える。
それに対してウルスも剣を構える。
――その所作だけで、ウルスが強敵だと理解するには十分だった。
「――はじめっ!」
先に動いたのはリートだった。
小細工をすれば一刀でやられると直感が告げていた。
だから全速力、かつ直線の突撃。
それに対して、ウルスは迎撃の剣を振るう。
二人の刃が交錯する。
――堅いッ!!
ウルスのそれはとんでもない剛剣だった。
まるで地面に幹を生やした千年木(せんねんぼく)のごとき芯の太さが剣から伝わってくる。
ウルスは剣士クラスの騎士だった。
したがって持っている常時発動スキルは“肉体強化”。
一方、リートは聖騎士クラスの常時発動スキル“神聖強化”を持っている。
スキルでいえばリートの圧勝。
しかし現実には二人の力は拮抗していた。
リートは押し切れないと判断し、身を翻した。そこからもう一度、今度は水平の斬りを加える。
しかし、それを受けてもウルスはビクともしない。
か、固すぎて、勝てる気がしない!!
リートはそう思った。
だが、実はウルスもリートの攻撃に舌を巻いていた。
――さすがは、聖騎士の力。だが、それだけでない。純粋に剣技が優れていて、スキルの効果を完璧に引き出している。
このわずかな時間で、二人はお互いの実力の高さを認めあっていた。
――と、これまで先攻していたのはリートだったが、今度はウルスが反撃にでる。
最低限の動きから、体重移動の力だけで放たれる斬撃。
だが、地面からの反発を全て乗せた一撃は重たい。
リートはすんでのところでそれを受け止める。
だがまるで大木が倒れてくるような重たい一撃に、リートは死の恐怖を感じた。
力を殺しきれず、後ろに吹き飛ばされる。
リートはなんとか地面を捉え、体制を立て直す。
――ウルスはとんでもなく強い。
リートはそれを確信した。
だが、同時に剣戟を交える中で、彼が防御を志向していることに気が付いた。
リートの力を測ろうとしているのだ。
つまり、駆け引きをしようとはしていない。
全てを受け止めてくれる。
だから、攻撃するのに、気兼ねする必要はないと直感した。
全速力で打ち込めば、成否はともかくとして必ず攻撃は当たる。
――ならば、防御は捨てて、全てを一撃に込める。
リートは、全力で地面を蹴って捨て身の一撃を放つ。
真正面から、リートのこれまでの人生で磨き上げてきた全ての剣技が詰まった一撃を放つ。
――ウルスのまゆが動いた。
二人の剣が再び激突する――
――――観客たちが息を飲んだ。
リートの剣が真っ二つに切断されたのだ。
――勝敗は決した。
リート自身も、力が及ばなかったとすぐさま理解した。
まだ加護は破られていないが、全力の打ち込みを真っ向から叩き切られた。
もう戦うすべはない。
――――――――――――――――
――――――――
――――
――だが。
「――私の負けだ」
敗北を宣言したのは、ウルスの方だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます