猛暑日


 瑞々しい残り香のような、重い太陽の日差しが照り付ける丘の上に、一人で立っている姿は心細いものだった。老人の独白が指し示す背景の黒さ、黒々と形を成した入道雲の音を思い出しては、その激しい雨が降ることに恐怖する。残念は炉辺で消えて、いよいよ大きくなる夏の日差し。和菓子が溶けた墓地を抜け、涼しい風が流れてくる。長いことそのままにされた旗は今日も、干上がった青空の間にあって動かない。高揚感の老人性を焼くことで、葬儀の瞼が閉じていく。若くして夏が熱いと、脳の奥まで春が移る。残念だった秋の暮は、いまに慰めてくれるのか。

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