【LIVE】人生RTA【人間五十年】
最早無白
プロローグ 転生
『はい、お
シメの挨拶をそこそこに、
霊界、つまりあの世にライブ配信の文化が広まって約半年。生前に同名義でゲーム実況の配信や『やってみた』系の動画をサイトにアップしていたこともあり、当時ファンだった魂が配信リンクや切り抜きなどを拡散してくれている。今回の雑談配信も同接数は最大で六千体を超え、霊界ではまあまあな大手配信者として活動をさせてもらっていると思う。正直この勢いだとトップを走ることも夢ではない。
霊界には一つ決まりが存在する。
それは『死後十年で魂を別の身体に移し、新たな生活を始めなければならない』というもの。人口が減ることはあっても、いなくならないのはそのためだ。
定期的な転生が求められるということもあり、『お前はダンゴムシだ!』とステータスを強制されることはない。転生する際に人間や犬、ひまわりなど、なりたい生物を選ぶことができ、前世の記憶をどの程度引き継ぐか調整するのも可能である。
例えば動物のモノマネが得意な人は、前世である動物の生態を呼び覚ましている、ということだ。
十年前に亡くなったNA2は次なる○○生を送らなければならず、その間に配信業界から自分の名前を聞かなくなるという可能性に一抹を通り越して五抹くらいの不安を覚えていた。
死んでいるので収益もなければ、名を広める利点もないが、自己顕示欲を満たしたい。寂しさを紛らわせたい。ただそれだけの小さな動機が生前から心にへばりついている。
「生きたくねぇ~……」
『死にたい』というフレーズはよく耳にしたり、SNSで見かけたり、それこそ高校生の頃は無限に頭に浮かんでいたが、それとはまたなんか違う。難しい話だよね。
とりあえずさっきの雑談配信で転生するとはリスナーのみんなには伝えたから余計な混乱は防げるけど、生き返って配信をやるにしてもNA2名義は使えないし、一からやり直すのも骨が折れる。もちろん霊界には折れる骨すらない。さてどうするか……。
「――あっ、いいこと思いついた」
もし転生先の様子を幽宙浮遊で配信することができたら――
こればかりは役人さんと話し合いだな。却下されたら記憶だけ引き継いで、生き方は後の身体に任せよう。
役場からは明日来てくれという旨のメールが届いていた。恐らく配信中に送られたのだろう。
そうそう、霊界に来て、時間の概念があることには驚いた。24時間365日、きちんとカウントされているのだ。なんでもお盆のシーズンに霊界の大掃除的なことをするそうで、作業に邪魔な有象無象の魂を一斉に現界へと放つんだと。
まあ前世の自分が記憶を消しているので、この反応になってしまうのは当然っちゃ当然である。話が脱線したが、なんにせよ退けない状況なのだ。
「来たか、11893756839番。転生先について、要望があれば申しなさい」
基本的に役人は魂に対して上から目線である。この謎の奴らは霊界を作った種族で、生ける物でありながら死と転生のサイクルからは外れている存在、いわば神様のようなポジションである。上から目線なのも無理はない。
魂はバカみたいに多い桁数でナンバリングされており、自分の数字が何なのかを覚えている者は見たことがない。覚えている奴は絶対円周率や元素周期表を愛している奴だ。そうに決まってる。
「人間のオスで、日本人がいいです。記憶は、前世と霊界の両方を引き継ぎます。それと……」
生活しやすい、というより『していた』土地を選ぶ。基本的な情報は前世と同じにしておくとよい、とコメントで多く言及されていた。
「それと、何だ? 詰まらずにはっきりと申せ」
「転生して現界で生活する様子を、幽宙浮遊でライブ配信を試みたいのですが……どうでしょう? いけますかね?」
いけたらやったー、だめならしゃーないだ。
「ほう、あれか。手が空いた時にいくつか見ているぞ。多くの者が十人十色な試みを行っておるな。現界の様相、か……面白い。我らが現界に赴くのは、貴様らを一時的に放つ時くらいのものだ。じっくりと雰囲気を楽しみたい役人もいるだろうし、生前を懐かしむ魂もいるかもしれないな。よし、認めよう」
「感謝致します。すぐ戻るかもしれませんが」
「ここもいい所だからな。まあ、貴様の好きなように生きろ」
そう言い残し役人は眼前から姿を消した。意外とすんなり認めてくれたあたり、ツンデレなのかもしれない。
それはそうと――現界の配信許可もらえた~! これでみんなから忘れられずに済む!!
そして転生の日。NA2は
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