円安ドル高の場合の日本経済のあり方

 円高ドル安の日本経済を想定した場合、財政政策は無効であり、金融政策は有効である。

 まず、前提条件を確認したい。現在の日本経済は、資本移動自由で変動相場制であるため、IS=LMモデルにBP曲線を加え、開放経済モデルに拡張したマンデル=フレミングモデルによる分析が可能である。なお、BPとは国際収支のことであり、経常収支と資本収支の合計である。また、自国の利子率に比べて他国の利子率が高い場合、より高い利子収入を求めて資金が海外に流出することを、資本移動という。

 円高、つまり自国の物価水準が上昇した場合には、何が起きるか。まず貿易収支が悪化し、それに伴って金利が上昇する。次に、より高い利子率を求めて資本移動が起きるため、資本が流入する。この結果、縦軸に利子率水準を取って横軸に国際収支均衡時の国民所得を取ったBP曲線が左上シフトする。

 為替レートの変動は、時には為替リスクにつながる。また、企業経営、貿易構造、産業構造、資本移動など、経済全体に影響するものである。特に円高の場合は、日本企業の国際競争力の低下が考えられる。そのために政府は財政政策あるいは金融政策という形で、経済に介入することがある。

 この場合、政府支出を引き上げる拡張的財政政策はIS曲線を右方向にシフトされるため、むしろ円高を促進し無効であると考えられる。また、利子率の上昇によって民間投資が抑制されてしまう現象である、クラウンディング・アウト効果の影響も充分に想定できる。また、政府の財政緊縮、投資の減退、輸出の減少などによる収縮的な財政政策は、IS曲線を左下シフトさせるために、無効であると考えられる。対照的に、名目貨幣供給量を増加させる金融緩和政策はLM曲線を右方向に動かすため、きわめて有効である。また、金融引き締め政策は、LM曲線を左上にシフトさせてしまい、国民所得の減少と利子率の上昇をもたらすため、逆効果となる。

 金融政策には様々な方法があるが、この場合は公開市場操作を行うことが考えられる。ここでは物価水準は一定と仮定する。政府が外貨準備を用いてドル買いを実行すると、政府保有のドルが増えると同時に市中に流れる円が増える。利子率の低下が始まり、日本の利子率がアメリカの利子率と均衡するまで低下し続ける。その結果、理屈上は、円高はどこかの地点で必ず納まる。なおその際、市場において理屈上は、投機的動機により貨幣需要が大きくなり、投資が活発になり、国民所得が増える。

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