C 出先の気象庁(母)

「これ、地殻経由の地震じゃないですよ。なんですか震源地が上空って」


「機材の故障をまず疑うわ。もう一度波形出して。精度を上げてね」


 群発地震の発生源に近い地殻の調査。本省もさすがにおかしいと感じたのか、人員を最大限出してくれた。


「いやこれ、やっぱおかしいですって」


「そうね。この波形はおかしいし、第一、さっき街の人に聞いた内容とも異なってる」


「空気の震え、ですか?」


 地震は気付かなかったという人がほとんどだった。しかし同時期に多くの人間が、空気が震えたと回答している。


「爆発、ではないですよね?」


「見た感じ爆発した跡はないし、七回というのも気にかかるわ」


 着信音。部下の端末。またか。


「さっきからずっと鳴ってるわね」


「民間の会社からなんか連絡が来てて。こっちは民間の金稼ぎに関わっちゃいけないってのに」


「省庁だからね。とりあえず休憩しましょ。次の波形が出るまでまだもう少しかかる」


「ありがとうございます」


 部下が端末を開いた。せっかくの部下の休憩時間つぶしやがって。おぼえてろよ民間。


「えっ」


 部下の顔色が変わる。


「統括っ」


「え、なに、人妻のわたしに告白しても無駄よ?」


「ばばあが百合の夢見てどうすんですか。とにかくこれ見てください」


 ばばあ言うな。化粧してないだけじゃ。


 温度分布。つい5分前からのもの。


「なにこれ。40度って」


「すぐに本省に連絡してください。はやくっ」


「え、いたずらとか」


「こいつらの情報が間違ってたことはほとんどないですっ」

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