アフターコロナ

春嵐

A 娘

 その日。


 暑くも寒くもなく、曇りだった。発注の関係で外回りしていて、その帰り。なんとかヒールで足がいたくなる前に帰れそう。


 それは突然、起こった。


 もともとそういう突然の変化に敏感なタイプで、医者からは磁覚が異常に発達してると言われたことがある。磁覚ってなんだ。わからん。


 8年ぐらい前に突然失踪したおとうさんも、磁覚が鋭いって言われてたっけ。おとうさん、いま何やってんのかな。というか、生きてるのかな。


「あ、やばいやばい」


 物陰に隠れる。


 あっ無理だこれ。物陰も無理。


 コンビニ。あった。走って、飛び込む。


「涼しい」


 間に合った。よく分かんないけど、気温が、なんかおかしくなってた。


 おばあちゃん。レジの店員さんにお礼を言って、ゆっくりすれ違って、外に。


 その肩を軽くつかんだ。


「お、おばあちゃん、いま外に出ちゃだめっ」


「ああら。おねえさん。どうしたのお?」


 間延びしたおばあちゃんだな。


「ちょっと待って。ね」


 どうしようか。


 端末を取り出して、検索をかける。


 やっぱり。


「見て、これ。今の温度」


 42度。



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