キーワードでショートストーリーズ

かめ

致命傷、ニューヨーク、速報

 ビックな男になる。そう心に決めた俺はニューヨークへ行くことを突然決めた。思い立ったが吉日とさっそく準備を始める。必要最低限の物だけ持って行こうと思った。なぜなら大荷物で行くよりもそのほうがビックになれる気がするからだ。パスポートと行きの飛行機代だけあればニューヨークには行ける。パスポートは大学生の時韓国に行ったことがあるので探せばあるはずだし、飛行機代を払えるくらいの貯金だってある。完璧だ。これで俺はビックな男になれる、そう確信した。


 パスポートを見つけた俺はさっそく財布とパスポートを持って車に乗り込み空港へ向うことにした。移動しながらニューヨークで何をやるか妄想する。意外とニューヨークに何があるかわからないがとりあえず自由の女神を見に行こう。そしてそこで何かしら自分の足跡を残してやろうと思う。そんなことを考えていたらテンションが上がってきた。自然とアクセルを踏む力も強くなる。


「速報です。」

 そんな声がラジオから聞こえてきた。

「只今ニューヨークで爆発テロが発生しました。」

「なんだと、まさか俺がニューヨークへ行くその日にこんな大事件が起こるとは! 」

 そんな大きな独り言を呟く。

「今日この日にこんな大事件が起きるなんて不謹慎だが運命が俺を歓迎しているようだ。俺はニューヨークでビックになってやるぜ!」

 テンションが更に上がり、アクセルを踏む力も更に強くなる。


 気がつくと車のスピードが160キロを越えていた。危ないと思いブレーキを踏む。ニューヨークに行く前にスピード違反で捕まったら笑い話だ。そんなミスを俺はしない。

「冷静になれ俺。クールでビックな男になるんだ。」

 そう自分に言い聞かせる。


 無事空港に着いた俺は急いで受付に向かった。息を切らしながら受付の人にニューヨークに行きたい旨を伝える。荷物の数を聞かれるがそんなものはないと伝える。あからさまに怪訝な顔をされたがそんなことはもう関係ない。

「それではパスポートをお見せください。」

 そう言われた俺は自信満々にパスポートを見せる。これで俺はニューヨークに行ける。ビックな男になれるんだ。そう心の中で叫んだ。

「申し訳ありませんがお客様は搭乗できません。」

 耳を疑うような言葉が聞こえた。

「なぜです!パスポートはあるでしょ!お金もある!他に何が必要なんだ!」

 そう受付の人に詰め寄る。

「申し訳ございませんがパスポートの有効期限が切れています。」

「な、なんだって。ど、どうにかならないのか!」

「申し訳ございませんがパスポートの期限切れは致命傷です。」

 致命傷ってなんだよ、そんな言葉普通お客に使わないだろと思いながらも言葉が出なくなり目の前が真っ白になった。

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