東京異世界学院
@yokuwakaran
第1話
「スゲー、『プロゲーマー養成専門学校』・・・。
『YouTuber養成専門学校』『プロバス釣り養成専門学校』なんてもんまであるんだね。」と僕。
「何でもアリだ。
金さえ払えばなんだって『目指す専門学校』には入れる。
昔から真面目に四年間『芸術や音楽』を勉強しようってヤツもいるのに『モード専門学校』だの『ミュージシャン養成専門学校』だのはあったんだ。
しかもそれらは『芸大』より卒業が早いときた。
そりゃ『辞めさせるためにハードな授業してる』のか『時期が短いからカリキュラムを詰め込んでる』のか・・・物は言い様だよな。
まぁ偶然かも知れないけど、入学直後にハードな授業があるんだよ。
『辞めさせようとしてる』
『入学金で儲けようとしてる』って話は偶然の一致かも知れないけどな。」と親父。
「なぁ、悪い事は言わない。
専門学校行くくらいなら働けよ。
働きたくないなら大学受けねーか?。
俺が版画家の端くれしてるのは知ってるだろう?。
俺はたまに小遣い稼ぎに専門学校で講義するけど・・・。
アイツら『石にかじりついてでもクリエイターになってやる』って必死さがないんだよ。
目が死んでるんだよ。」と親父。
「金もらっておきながら、ヒデー言い様だね。」
「いや俺は『相手を利用してやろう』『利用されてたまるか、逆に利用してやろう』って関係嫌いじゃねーんだ。
だから講師の話だって受ける訳だし。
でも、同時に『人の親父』でもあるんだよ。
死んだ目のガキ見て『良い様に利用されやがって、月謝運びさせられやがって』って唾吐いてばかりじゃいられねーんだよ。
死んだ目のガキの親の顔を思い浮かべちまうんだよ。
ましてや自分の子供が『専門学校に入りたい』なんて蕀の道選ぼうとしてたら止めるだろう?親として・・・。
・・・と、その前に『何で専門学校に入りたいのか?』聞かせてもらっても良いか?。」と親父。
「もう勉強したくねーの。
だから大学には行きたくない。
だけど、まだ働きたくないんだわ。」と僕。
「お前・・・『専門学校は勉強しなくて良い』って甘ったれた考え、どこから生まれたんだよ?。
逆だよ。
二年しかないところにカリキュラムを詰め込む。
だから専門学校の勉強は最初から信じられないくらいハードなんだぞ?。
その認識が狂ってる甘くてバカな専門学校生が多いせいで、どうしようもない悪徳専門学校が淘汰されないんだよ。
『その認識じゃ、続かないのは当たり前だろ』って世間じゃ相手にされないからな。
他人様の家の子供が『専門学校生になる』とか・・・本当にどうでも良い。
ウチの、俺の子供であるお前が『専門学校生になりたい』って言うのが問題なんだよ。
しかも、その理由が『勉強したくない』『就職したくない』なんてなめた理由ときたモンだ。
間違いなく1ヶ月もしないで専門学校やめるよな?。
・・・で、フリーターになれば大したモンだけど、高確率でニートになるだろ?。
ここでお前が『専門学校生になりたい』って認める事は『ニートになりたい』って認める事と同義なんだよ。
・・・まあ、頭ごなしに『ダメだ』なんて決めつけるのは間違ってるのかもな。
・・・で、お前はどんな専門学校に入りたいんだよ?」と親父。
「決まってねーよ。
決まってる事と言えば専門学校じゃ遊びたい。
ただ、卒業後はクリエイティブな仕事がしたい。
週休二日は欲しい。
あと年収5000万円は欲しい。
そんな感じかな?。」と僕。
「俺と母さんの甘さがこんなモンスターを産んじまったんだな。
わかった。
お前がどんな専門学校に入ろうと入学金、学費、食費、生活費の全ては出す。
それはお前をモンスターにしちまった親としての責任だ。
だがその後のお前の人生には一切、俺や母さんは関わらない。
親子の縁も切る。
お前が自分の人生に立ち向かおうとしないなんていう情けない姿は親として見たくない。
お前が万が一にも成功したとしても、後から親として名乗り出る事は有り得ない。
お前の好きにすれば良い。
お前はお前の入りたい専門学校に入りなさい。」
こうして僕は両親に見放された。
とりあえず、自分で専門学校を探さなきゃいけない。
『YouTuber養成専門学校』はどうだろうか?。
そもそもYouTuberは養成されて作られるものだろうか?。
ほとんどが他の動画チャンネルで活躍してた人ばっかりなんじゃなかろうか?。
それに『動画作成』とか『パソコンいじり』とか全く興味がない。
じゃあ『プロゲーマー養成専門学校』とかどうだろうか?
第一にゲームを30分以上やってると頭が痛くなる。
そんな理由でゲームはそんなに好きじゃない・・・つーか大嫌いだ。
嫌いな事を仕事に出来るの?。
だったら、勉強しろ。
嫌な事にも取り組んでみろ、という話だ。
参った・・・YouTuberにもなりたくない。
プロゲーマーにもなりたくない。
大学生にもなりたくない。
勉強したくない。
働きたくない。
人としてどうなんだろうか?。
何もかもがタイミングだ。
この時、もう少し自分を見つめ直すのが早かったらそれまでの自分を反省し真人間になったかも知れない。
この時、ネットを見ていなかったらパソコンモニターに映っていた怪しいバナーをクリックしなかったかも知れない。
『あなたにピッタリの専門学校を探します』
パソコンの画面ではバナーの文字だけが点滅を繰り返している。
自分に合う専門学校をネットで探していた時、バナーが目に入った。
ウィルスに気をつけるべきで、怪しいバナーは踏んではいけない。
ネットサーフィンの基礎中の基礎だ。
だが、魔が差したとしか思えない。
僕は普段ならクリックしない怪しいバナーをクリックした。
パソコン画面には『yes/no』方式で答えるように質問が書かれている。
『ネットサーフィンは好きだ。』
唯一の趣味と言って良い。yes
『ラノベは読むほうだ。』
まあ、結構読むほうだろう。yes
『異世界物のラノベを読む。』
ラノベ読んでたら避けては通れないよな。yes
『生まれてきた世界を間違えたと思う事がある。』
息苦しい世の中だよな。もう少し気楽な世界なら良かったのに。yes
『正義感が強い。』
んな訳ねーだろ。no
あなたにピッタリの専門学校が見つかりました。
『東京異世界学院』
えーっと、住所は東京都世田谷区三軒茶屋・・・。
検索しても他の学校出てこないし『僕にピッタリ』らしいし、明日見学だけでもしてみるか。
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