第28話.動き出すゾディアック
『IPIU最高責任者の
4人の隊員の死。
このタイトルを見て、俺には思い当たる節があった。
IPIUとはヒーローの事。
1週間前の任務の時、新田さんが3人、俺が1人のヒーローを捕えている。
捕らえたヒーローは遺体は見つかっていなくとも、国の調べでは死んだと思われても不思議じゃない。
考えてみれば、ヒーローが1日で4人も死ぬなんて珍しいなんてもんじゃない。
年に1回もあるかどうか。
そんなことをやらかしたんだ。
国が問題視するのも当然だよな。
にしても一体どうなるんだよ……。
いや、ここで悩むよりも、新田さんの元にでも行った方がいいか。
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アジトの建物内に入った。
しかし、そういえば新田さんは何処にいるのだろうか。
そういえば元々ゾディアックに入ってから特定の誰かに用事があったことはない。
呼び出されたことはあったけど。
だからどこに行けば新田さんに会えるのかはよくわからない。
まあとりあえず6番隊の隊員用の部屋に行くか。
それぞれの隊に与えられた部屋はアジトの入り口から近い。
地下に降りるとすぐにたどり着いた。
トントントン。
そっと3回扉を叩いて扉を開ける。
「誰だ? って能見か。ちょうどいいところに来たな。ニュースは見たな?」
部屋の中にはいると、新田さんがいた。
他の隊員は全くいない。
その新田さんもパソコンから目を離そうとしないし、かなり忙しそうだ。
「あ、はい。ニュースは見ました。ヒーローのトップが三大秘密組織を潰すと公言したと」
俺は新田さんの問いに答えがら、軽く頭を下げて椅子に座る。
「そうだ。当然ヒーロー側も馬鹿じゃないから日時までは公表していないがな。それを受けて俺たちもその対策をしなくてはならない。そこでだ。ひとまず部隊ミーティングを行おうと思う。ちょうどお前を呼び出そうと思っていたところで来てくれて助かった」
そう言って新田さんは再びパソコンに向かい合う。
はぁ……。
これは新田さんに色々聞いたりなんて出来そうにないな……。
俺はそう思ってしばらくボーっと座り続けた。
ソシャゲでもやろうかと思ったが、忙しそうにしている新田さんの横で呑気にゲームをやっているのは流石に気が引けたからな。
そんなこんなで時間を潰していると、突然新田さんがスマホを見ながら俺に声をかけてくる。
「悪い。急用が入った。全部隊の隊長と副隊長を集めた代表者ミーティングをやるそうだ。とりあえず第6部隊の隊員全員にはここへ来るように声をかけておいたから、他の奴らがやってきたら事情を説明しておいてくれ」
「え……?」
「じゃあな、頼んだぞ」
新田さんは一方的に話すと、そのまま慌てるように席を立って部屋を出て行ってしまった。
呆気にとられていた俺は、正直何をすればいいのかわかっていない。
てか事情って、こっちが聞きたいくらいだわ。
まあ新田さんも随分と忙しそうだしな。
丁寧に色々説明してる暇はなかったのだろう。
しかしその代表者ミーティングとやらはどれだけ時間がかかるのやら。
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「悪いな。随分と遅くなった」
結局新田さんが帰ってきたのは時計の針が19:00を回って少し経った頃だった。
新田さんの後ろには一ノ瀬隊長もいる。
これで一ノ瀬隊長、新田さん、鶴城さん、星川、俺の5人が集まった。
ちなみに鶴城さんと星川は新田さんと入れ替わるようにやってきて、とりあえず俺は「これから部隊ミーティングを行うようです。新田さんと一ノ瀬隊長は部隊長ミーティングに行くようでしばらく時間がかかるようです」と説明しておいた。
ちなみに俺の説明に、鶴城さんが「げっ……」と言っていたのでどういう事だろうと地味に疑問に思ったのだが……。
まさかこんな時間になるとは……。
19:00って寮の食堂が開く時間じゃねぇか。
そんで20;30には閉まるから、最低でも20:00くらいにはいかないとゆっくり食事がとれない。
夕飯が抜きになるとか冗談じゃないのだが。
しかも俺は今そんな状況の中、さらに不吉な予感を感じ取っている。
それは……。
「あの、新田さん、確かうちの隊って俺も含めて7人ですよね? 5人しかまだ集まってませんが……」
「は? あいつらすぐ行くとか言ってまだ来てねぇのか?」
やっぱりか……。
うちの隊の残り2人の人はそう言えば一度も見たことがない。
しかもすぐ行くと言って3時間近く遅れるとか……不真面目なのだろうか。
新田さんが、組織の命令は絶対、みたいな気真面目過ぎる人間だし、鶴城さんなんかもかなり真面目そうな感じだったから、ゾディアックの隊員はみんなそんな感じのかと思ったが……。
もしやまだ待たされるのか……?
俺は顔も知らぬ2人の隊員に憎しみが募る。
しかしそんな時だった。
「ごめんごめん! 遅れちゃった」
「いやぁ、ちょっと帰りに遊んd……じゃなくて道に迷って遅れちゃったんだよねー。ははは」
勢いよく扉を開き、室内に入ってくる2人。
悪びれる様子もなく、舐めた口を利いている。
しかも2人目の男の方に至っては遊んでたら遅れたとか言いかけてたし。
想像の斜め上を行くようなふざけた奴だな。
「先輩。これはどういうことですか?」
そんな2人をこの人が放っておくはずがない。
新田さんが冷静に、しかし確実に怒気が含まれた声音で問い詰める。
普通に怒鳴られるよりこういう風に言われる方が怖いよね。
てかこの2人は新田さんより年上なのか。
「まあまあ、新田っち。そんなに怒らないでよ」
「そうだぜ進登。ちょっと遅れっちゃったけどちゃんと来ただろ……?」
2人も新田さんのオーラに少し後退るが、軽口はやめない。
てか新田っちってなんだよ。
そんな2人の態度に新田さんも……。
「いい加減にしてください! だいたい六花さんたちはいつもいつもですねぇ……」
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