超能力者高校生の俺は、悪の組織の構成員!
不知火 翔
Prologue
第1話.謎のメール
明日から夏休みに入る。
誰もが喜ぶであろうこの日に俺は最悪の気分を味わっていた。
「おい、能見。進路は考えてきたんだろうな?」
その理由は、先生との面談である。
俺、
この時期になっても俺は進路が全く決まっていなかった。
そのせいで心配された俺は先生に呼び出されたのだ。
だが、俺は進路に関して全く焦っていなかった。
その理由は……。
「先生、だから何度も言ってるじゃないですか。進路は民間就職だって。俺は超能力者なんだから中卒でもそこら辺の大卒の人間よりも圧倒的に高待遇で雇ってもらえる。これの何が問題なんですか?」
──超能力者。
20世紀の終わり頃以降に生まれた新生児が、極稀に超能力と言うべき現代科学では説明のつかない超常現象を引き起こせることが発見された。
そんな超常現象を起こせる人間を、世間では超能力者と呼んだ。
超能力者の出生率は国の調べでは0.01%。
つまり10000人に1人である。
この俺も、その紙のように薄い確率を引き当てて生まれてきた1人だ。
人間の手で行うには、かなりの時間がかかったりする作業を一瞬でこなすことの出来る超能力者は、様々な職種で活躍する。
そのため、数の少ない超能力者は、学歴など関係なく高待遇で雇用されているのだった。
世はまさに、超能力時d……(自重)。
しかし、超能力者はそんな福沢諭吉の言った「天は人の上に人を造らず」という言葉をぶち壊すような理不尽な存在である。
理解がある人間は超能力者が出現して20年以上が経過した今でも少なかった。
「中卒なんて親が悲しむだろ! いいか、お前は明日も学校に来い! 先生が資料を持ってきてやるから一緒に考えるぞ 分かったな?」
そしてもちろん、つい先日45歳の誕生日を迎えたらしい我が担任も例に漏れず、超能力者に理解が無い人間だった。
まぁ気持ちは分かるがな。
必死に勉強して有名国立大学を卒業した人間よりも、成績晩年最下位の中卒の超能力者の方が給料がいいのだ。
俺が前者の立場なら、ふざけるなと激昂している所だ。
だが今の俺は生まれた時から勝利が決定している後者の人間である(まぁ成績はそこまで悪くないが)。
天から貰ったこの才能で存分にイージーな人生を送りたい。
しかし、俺の親もこの担任と同様で、高校にはちゃんと行けとうるさいんだよな。
はぁ、どうしたものやら……。
俺は不機嫌そうに教室を出ていく担任の背中を見つめながら溜息を吐いた。
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クソ、あのクソ老害め。
帰り道、俺は心の中で担任に対して悪態をついていた。
そんな時だった。
ポケットの中のスマホが振動し、俺に通知が来たことを知らせる。
もちろん中学校なので、学校にスマホを持ってくることなど禁止だが、バレなければどうということは無い。
そして仮にバレたとしても、超能力者の俺からスマホを持っている証拠を引き出すことなど不可能。
どんなに荷物検査、身体検査をされようとも絶対に見つからないように隠せるのだから。
俺はスマホを起動して通知の内容を確認する。
どうやら一通のメールのようだ。
俺にメール……?
疑問に思いながらパスワードを入力してすぐさまメールの文章を読む。
『初めまして、能見蓮様。私は秘密結社ゾディアックのスカウトをやっております木崎と申します。本日は超能力者である能見様に、是非ゾディアックの構成員として働いて頂きたく思い、ご連絡させて頂きました。もしご検討いただける場合は、本日又は明日の10:00~22:00までに下記地図に示してある場所にお越しください』
何だこれ……?
俺がこの文章を読んで最初に思ったことがこれだった。
しかし、ただのイタズラと一蹴することは出来ない。
俺の本名をわざわざ調べているからだ。
それにゾディアックというのは有名だ。
過去に沢山の重犯罪を犯しながら、国に全くその正体を掴ませないエリート超能力者集団である。
要は悪の組織だ。
もしかしたら本当に……。
だとするとこのメールを警察にでも見せれば表彰ものなのでは?
警察なら、このメールは発信場所や発信した端末の特定ができるかもしれない。
そしてこれらの情報は今まで国に少なくない損害を与えてきたゾディアックを捕まえる重要な手掛かりとなるはずだ。
しかし、この時俺の頭に浮かんできた選択はこれだけではなかった。
この誘いを受けてみたい……!
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