大塚くんとカラオケ

 クラスメイト全員の自己紹介が終わる。

 あの女連中のせいでほとんど記憶に無い。

 明日からの学校生活が憂鬱だ。


「大塚くん、この後カラオケ行くけど来るよね?」


 イケメンが話しかけてきた。

 やばい……名前がわからん……。


「堀くん、そんな奴誘わなくていいから!」


 てめぇは覚えてるぞ、モノマネの江崎!

 まぁ、行ったら何されるかわからん。

 断ろ。


「ごめん堀、誘ってくれて嬉しいけど遠慮しとく」

「そうかい……わかったよ」

「え?かいくん行かないなら、私も行かない!」

「私も海都くん来ないなら遠慮します」


 神崎と橘が堀に言う。


「俺に気を使わず楽しんできて」


 頼むから行ってくれ。

 俺のために寧ろ行ってくれ。

 男子達の機嫌を取ってきてくれ!


「海都くんがいないなら行く意味ないよ」


 橘、頼むからボリューム下げてくれ。


「お肉の無い焼肉なんて誰が行くの?」


 神崎、これ以上煽るな!


「大塚来るなら、2人とも参加するんだね?」


 拳を震わせる伊藤。

 その拳が俺に向かないことを祈る。


「「もちろん!」」


 満面の笑みの2人。


「大塚……来いよ……。おめぇには1人部屋を特別に取ってやるからよぉ!」


 怒ってるのか変顔なのか、わからんぞ伊藤。


「嬉しいな!大塚くんも来てくれるのか!」


 イケメン堀は心もイケメンらしい。



 メンバーは俺、神崎、橘、堀、三バカ(伊藤、江崎、上田)、そして何故か白石未玖だった。



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「現在大変混み合っておりまして、大部屋1室でしたらご案内できます。どうなさいますか?」

「それでお願いします……」


 残念そうな伊藤。


「おー!結構広いな!」

「俺、フロントでスタンドマイク借りてくる!」

「これ新しい機種じゃん!」


 はしゃぐ三バカ。


「かいくん、飲み物入れてきてあげるよ!」

「じゃあ、メロンソーダで」

「じゃあ僕は、白石さんの入れてこようかな!」

「流石イケメン!私もメロンソーダで」

「「それなら僕は、恋叶ちゃんの入れてあげるよ!!」」

「自分で入れるので大丈夫です!」


 玉砕する上田と江崎。


 神崎達がドリンクを入れに行き、部屋で白石と二人きりだ。

 気まずい……。

 隣に座る白石から良い香りがする。

 これが流行りのドルチェ&カッパーナーの香水ってやつか!


「自己紹介の時はごめんね」

「気にしてない」


「で、神崎さんと橘さんとどういう関係なの?」

「女子ってほんと恋バナ好きだよな」

「だって気になるじゃん」


「神崎は中学が一緒で、橘とは初対面だ」

「二人とも可愛いと思うけど、どっちかと付き合わないの?」

「ないな」

「ほかに好きな人がいるとか?」

「いない」

「ふーん……」


「あれ?まだ曲入れてないの?」


 神崎達が戻ってきた。


「みんなを待ってたんだよ。ね、海都くん」


 どうしてこのクラスの女子は、気安く下の名前を呼んでくるんだ。

 三バカだったら直ぐに勘違いするぞ。


「あれ?まだ曲入れてないのか?」


 伊藤、そのくだりは今さっきやった。


「よっしゃ!もう1回、知りtender歌おうかな!」


 二度も聴きたくないぞ上田。


「自己紹介で聴いたから、他の曲頼むよ」


 ナイスだ堀。


 ーーイケナイ海洋

  ORANGE SANGEーー


 曲が入る。

 どうやら江崎が歌うみたいだ。



 うん……。

 決して下手ではない。

 上手くもない。

 一番反応に困るやつだ。


 パチパチ……パチパチ……


 取り敢えず拍手をする一同。

 満足顔の江崎であった。


 ーー知りtender

  Official影男dismーー


 レパートリー無いな上田!

 しかし、マイクを握って立つのは伊藤。


 伊藤はオクターブ下で歌い出す……。


 さすが伊藤!

 おれたちにできない事を平然とやってのける。

 そこにシビれないし、あこがれない。

「お、やるじゃん」みたいな顔で伊藤を見る上田。

 二人だけでカラオケに行ってくれ。

 開始20分で絶望する。

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