第3話 ゲオスミン

「桐生!」

朝、学校に着くと早々私は隣の席で本を読んでいるあいつの席を叩いた。

「……びびったぁ!…なんの御用ですか、水瀬さん。」

今はこいつの人を小馬鹿にしたような物言いも全く気にならない。

だって、私もぺトリコールが何なのか、知っているから。

「雨の降り始めの香り。ギリシャ語で、石のエッセンスって言う意味なんでしょ?」

どうだ、ざまあみろ。私だって知ってるのよ。

そう言おうとしたのに、こいつはキョトンとした目で私のことを見てくる。

「え、もしかして本当に調べたの?」

「そ、そうだよ。調べろって言ったじゃん。それに、私もぺトリコールって何か知りたかったんだもん」

本当のことしか言ってない。

変なことなんて一切していない。

確かに昨日こいつは調べてみろ、って言ったし、私もこいつがこだわるぺトリコールのことが知りたかった。

なのになんでこいつはこんなに笑っているんだろう。

「ふっ、面白ぇやつ。……じゃあ、ゲオスミンは?」

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