六. 始まりのパラドックス
「率直に言おう。お主の
口調こそ優しかったが、それに付いてくる意味はレイにとって心を鈍器で殴打するようなものであった。
すぐに理解できた分、重く突き刺さり、がっくりと面に影が落ちる。
「そ、そうですか。。」
笑わない笑みをレイは顔に浮かべた。
覚悟はしていたことだ。しかしその覚悟こそあれ、いざ現実を突きつけられると、一縷の希望も手から零れる砂のように再び拾うことは叶わなくなる。
腑に落ちていないわけでもなかった。どうして頑なに
雀兎は気が付いていたと、そう考えるとレイは合点がいった。
おそらくレイの流れる川のような魔法への無邪気な好奇心を知っていたから雀兎は真実を伝えられなかったのだろう。
(―でも・・・)
「覚悟はしていましたけど、実際に突きつけられると意外と苦しいものなのですね」
「儂らもいろいろな可能性を考慮はした。しかしどう結論づけてもこのような結果しか導かれなかったのじゃ。じゃが完全に望みが消えてしまったとはまだ言い切れない。人の
とは言っても
しかし薄い励ましでも精一杯の忠恕には応えるべきだとレイは考え、感情を初めて取り繕う。
「はい。僕も僕でどうやったら魔法が使えるようになるか考えてみます。とりあえず学校ではやれることを精一杯やっていこうと思います」
「うむ。それがよい」
シャルルは優しく安心した。
その後も暫く談話をし、レイは学長室を退出した。そしてその頃には心もすっかり切り替えられていた。
◇ ◇ ◇ ◇
「校長先生。どうでしたか?」
「うむ、君がいうように危険ではなさそうであったぞ。少し特殊ではあるが至って普通の生徒にしか見えんかったぞ」
「その琥珀の魔眼にも同じように映ったのですか?」
「そうじゃ。この眼を通してもそう映ったのじゃ」
シャルルは目を開いた。両眼とも琥珀色をしていたが、左眼には六芒星が浮かんでいた。
「では、本当に魔力もなかったのですね?」
「ああ。そうなるのぉ」
「未知の人間兵器の可能性は?」
「完全に否定はできんじゃが、それも薄弱なところじゃろう」
しかしこの時シャルルには一つの大きな懸念が残っていた。
「とりあえず
あくまでもレイのため。そう言い訳を添えることにシャルルは後ろめたさを覚える。シャルルが
だがあの懸念は棄て去ることもできなかった。あの男が言ったあの言葉が現実に現れたのだから。
「承知いたしました。伝達しておきます」
(―
シャルルの琥珀の眼には眼前にいない誰かがしっかり映っていた。
◇ ◇ ◇ ◇
しかしこの定説、この世界のこトわリの一つを逸脱してしまった者が潤女玲である。彼には循環どころか
かなりの大事ではあるはずだが、シャルルはレイの情報は公式には秘匿した。人体実験の
これは世界で唯一魔力を持たない少年レイが世界を紡ぐ物語。その緞帳がいま、引き上がる。
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