三. 魔獣との邂逅

  


 入学式の後は一時解散となり、午後に教室に再集合することになっている。


「おいおい、お前が成績最優秀者なのかよ〜未だに信じられないぜ〜」

 

 

 しっかり担任であった女教諭にどやされた二人は学生寮に向っている。

 しかし二人に反省した様子はない。




「あははははは。僕もあんまり実感がないや。勉強は雀兎とかに教えてもらってたけど、くらべる相手がいなかったから。こんなに優秀だったんだね、僕」

「なんだと〜」


 カインはレイの頭をわしゃわしゃと強く撫でる。


「や、やめてよ〜ははは・・・ん!?カイン危ない!」


 レイは撫でるカインの腕を摑み込み同体で倒れ込む。



「お、おい、なんだよ。悪かったって」


 その謝罪と同時に一影が二人の上を通過する。



「・・・・・・・・・・・っ!?!?」


 二人が起き上がると目の前に、犬、のような、狼、ような、禍々しい雰囲気の物体が牙を剥き出しにして二人を睨んでいた。





 ガルルルルルルゥ




 口からは煙が出ていた。火でも吐くんじゃないか?とレイは思う。



「こ、こいつ魔物か?なんで敷地内に?」



「みんなここから離れて!」



 周りの生徒は第3クラスの生徒ばかりであった。



 そのレイの張った声に反応したのか、その魔物はグワァッっと一回吠えレイたちに飛び掛かる。


 レイは素早く体勢を立て直し、重心を低くする。すぅーっと深く息を吸う。

 そして魔物の速さを活かし、両手で魔物の腹部辺りに掌底撃ちをかます。




 ズドンッッ!!




 周りには風魔法を体術に応用したように見えたレイの攻撃で魔物は大きく吹き飛び地面に叩きつけられる。


 

 魔物はキュウウウンっと一瞬怯むが、すぐに立ち直り、毛を逆立て、レイの方を今度は警戒するように強く睨む。



 レイも腰を落とし構え直す。



(―朝の不気味の正体はこの犬だったのか)



「カイン無事か?」


 しかしその安否確認が油断と取られたのか、魔物は咆哮したと思えば口から火焔を放つ。



(―!? 魔法!? 本当に火吹いたよ!! しかも後ろにカインがいるから避けられないっ!)


 レイはとっさに腕をクロスして防御姿勢を取る。



(―絶対熱いよ。火傷やだよ。ローブ燃えるよ!いや、燃えないけど! ん?)


 


 ”湖上の氷蓮”


 

 

 刹那にレイに向う炎は白いもやとなって消える。

 襲いかかってきた魔物は燃えるような氷の華の中に封じられていた。




「暑い次には冷んやりだ」


レイはボソッと呟き緊張を解く。


「す、すげぇ。魔物が一瞬で氷漬けになってる」



 そこに一人の女教諭が駆けてくる。


「お前たち、怪我はないかぁ〜?………なんだまたお前らか…」


 さっき二人をどやした女教諭である。



「今回は俺らのせいじゃありませんって!」


「今回”は”な。ああ、零月か。ありがとうな」


 

 先ほどの氷魔法はまいのものであった。



「いえ、偶々近くに昏い気配を感じたので。後の始末はよろしくお願いします」


 英はお辞儀をし、静かに去っていった。



(―魔法ってすごいや)



「とりあえず、お前ら二人は寮で荷物とか準備とかあるだろう?それを片してからこの魔物・・・いや、いい。とりあえず支度を終わらせ、先程伝えた通り教室に来い。今度は遅刻するなよ?」


 はーい と二人は返事をし、学生寮に再び向った。

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