明日も天気になーれっ!

高森あおい

第0話 プロローグ

「あっ、ママ、あそこにいた……」

「ホントだ!ねーねーママ!どこ行くのー?」

街灯のない闇の中に佇む親子三人を、月明かりが優しく照らす。

そろそろ寝る時間だったのだろう。そっくりな幼い女の子二人はパジャマ姿だ。

愛する母を見つけた二人は、不安げな表情を見せ駆け始める。

だがすぐに明るい笑顔に戻り、早足で歩く母に追いつきその腕を抱きしめた。

「ママ、もうベットのおじかんだよ!あたしたち、もうはみがきもおわったんだからねー!」

「きょうのえほんはね、パパがよんでくれたんだよ。いつもはママがよんでくれるのに、なんで今日はいなかったの?」

舌足らずながらも一生懸命に話す様子は微笑ましさを感じさせる。

母親はしばらく悲しいような苦しいような面持ちでいたが、やがて決心したようにうなずいた。

2人の幼女の目線の高さに合わせるようにしゃがみ込むと、重たそうなかばんの中から1つの箱を取り出し、渡した。

「ママはちょっとご用事があって、おでかけに行ってくるの。これはママの大事な宝物だからママが帰るまであなた達に預かっていてほしいんだけど、いいかな?」

「「………たから、もの?」」

「そう。とっても大事な、たからもの」

母親はにっこり微笑み、不思議そうにしている女の子たちがうなずくのを確認すると、誰にも聞こえないような声で、

「あなたにもいつかこれを使わなければならないときが来るはずだから。」

とつぶやく。

そして、最後に二人の子の顔を目に焼き付けるように見つめると、そのまま足早に立ち去っていった…………

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