一人暮らしをしたいぼっちオタクな俺が、初恋の人兼いとこの美人お姉ちゃん先生と突然同居することになった件 ~姉が嫁入りしたいのは俺らしいし、ギャル幼馴染はぐいぐいくる〜
第1話 アサヒスーパー●ラァァァイ!!!!!
一人暮らしをしたいぼっちオタクな俺が、初恋の人兼いとこの美人お姉ちゃん先生と突然同居することになった件 ~姉が嫁入りしたいのは俺らしいし、ギャル幼馴染はぐいぐいくる〜
たかた ちひろ
【一章】念願の一人暮らしのはずが、お姉ちゃんと同棲っ!?
第1話 アサヒスーパー●ラァァァイ!!!!!
一
ついに勝ち取った念願の一人暮らし! ……の、はずだった。
しかし入居日、新居の鍵を開けて部屋に入ると、そこには女がいた。
艶めいた長い黒髪に、洋菓子の如く華のある美しい顔立ち。凹凸のはっきりとした上半身をくねらせ、すらりとした足を内股に折った座り方は、大人の色気を垂れ流す。
それはそれは美しい、まるでお姫様だった。
手元のビール缶・アサヒスーパードライ以外は。
「あのー………どちらさまで?」
まさか前の住人の退去前だったのだろうか。いやいや、契約はもう切り替わっているはずだ。違法侵入者? だが、それにしては余裕がありすぎる。
「今日から一緒に住むんだよ、こうくん♡」
「……なんで、俺の名前?」
こう言ってから、女の顔を見て気づく。昔焦がれた面影がはっきり残っていた。
「そりゃ知ってるよ〜でも前に会ったのは随分昔だから覚えてないかなぁ。お姉ちゃんショック……。私、従姉妹の早姫だよ。中川早姫!」
そう、お姉ちゃんだった。
♢
誰にも邪魔されず、ゲームがしたい! が、俺・吉原幸太が一人暮らしを決意した最初のきっかけだった。
部屋にスピーカーをつけて大音量でギャルゲーができたらどれほど素敵だろう! 全身で声優の美しい声を味わってみたい! ストーリーにどっぷりつかりたい!
現実の恋愛に絶望して早幾年。長年親に隠れてコソコソとギャルゲーをプレイするうち、もはやそれは俺の夢と化していた。
けれど、実家は音が筒抜けのボロ屋で、その夢は到底叶いそうになかった。そんなことをすれば近所に俺の悪評が広まってしまいかねない。
だから、大学生までは我慢をしよう、と決めていた。
たかがあと二年耐えるだけだ。そう痛切な覚悟をしていた俺のもとに、大チャンスが突如として転がり込んできたのは今から一月前だった。
父親の春からの転勤に伴い、一家が他県へ引っ越すことになったのだ。このチャンスを逃すまいと、俺が必殺技として使ったのがこのワード。
「友達とも彼女とも離れたくないんだ! 俺はここに残りたい!」
もちろん嘘である。ゲームの台詞の受け売りだ。なんなら、どちらも存在さえしない。
でも親はこの青春っぽい嘘にはほろっと涙を流して騙されてくれた。そして、俺は念願かなって、一人地元に残ることになったのだ。
借りるのが許されたのは、小さなワンルームの部屋だったけれど、そんなのは些末なことだ。狭いとはいえ我が城を手にすることができたのだから。
さーて、業者から荷物を受け取ったら即行ゲームをしまくって、声優の声を部屋中に響かせてやる!
そして、明日から始まる新学年への憂鬱を吹き飛ばすのだ。高校二年生、勉強なんてクソ食らえである。
そう、もうるんるんの気持ちだった。
夜の六時になり、ちょうど電気のついたアパートの廊下をスキップで渡る。そして俺の部屋、203号室の前で止まった。
もう新しい部屋の中で待っているだろう夢にしか目がいっていなかった。
初めて鍵を差し込み、初めて戸を引き、中が見えるまではかなりわくわくしていた。
だのに、
「久しぶりだね、こうくん! うわー、大きくなってる! ほらこっちおいで」
「……なんで早姫さんがここにいらっしゃるのでしょう?」
「うわー早姫さんって他人行儀だな〜。昔みたいに、お姉ちゃんでいいよっ!」
どうして従姉がここにいるのだろう。
それもなぜか、部屋には既にシングルベッドや机が設置されている。全体に統一された薄桃色は、俺の趣味ではもちろんない。
彼女は遠方で暮らしていたから、会うこと自体、五年ぶりくらいだった。
なにを隠そう、初恋の相手でもある。当時小学生の俺は、大学生だった彼女に惹かれた。それをクラスメイトに話してみたら、「年上すぎでしょ」「大体親戚じゃん」と無理無理の大合唱。そうして俺は初恋を諦め、恋というものに絶望したのだ。
そんなこともあったから、もう二十六になるはずだが変わらぬ美貌を保つ彼女を前に、俺は目をパチクリするしかできない。
「はい復唱〜、お姉ちゃん!」
「……早姫お姉様、なぜここに?」
「うわっ、なにそれ王族みたい! でも、それありだね。執事みたい、いいじゃん」
全く質問に答えてくれない。へへっと顔を赤くするのみだ。
王族扱いに照れているのか。もしや、もう酔っているのか……?
「うへへ〜、私、王族の姫? シンデレラ? うっひょ〜憧れる〜」
あ、そうみたい☆。やばい、両手で一気に二つの缶を開け出した。
このまま酔いどれの言葉遊びに付き合わされるのはごめんだった。俺は一度玄関の外へ出る。
電話をかけた、母親に。
早姫お姉様は母方の親戚だからだ。
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