願いをさえずる鳥のうた

新吉

第1話 寝顔さえぎる鳥のうた

「これなあに」


「カラスだよ」


「ほんとだ」



 青い空はキャンバスだという人がいる。僕は絵が下手だから、黒い染みのようなものしかかけない。


 網戸に虫除けスプレーをふって。扇風機の首も振らせて、みんなでごろ寝。これでも大きくなったけど、まだまだ小さいからだで全力で遊ぶ早織ちゃん。遊びつかれて可愛い寝顔で隣で寝ている。へたっぴな僕の絵でも喜んでくれた。早織ちゃんは僕の姉貴の子ども。姉貴も今大口開けて隣で寝ている。眩しくて逃げた僕が寝ていたところには、これでもかってくらいの太陽が照っている。これが早織ちゃんのところに当たらなくてよかった。僕はむっくりと起き出して、トイレへ。


 空は変わらず青くて、雲がもくもくと大きくなっている。セミはうるさいけれど、意識するのをやめればだんだんとBGMになる。冷蔵庫から麦茶を出して、コップに氷をいれて注ぐ。からころ鳴る。テーブルにはさっきまでラクガキしていた絵が何枚か残っている。早織ちゃんは絵がうまくて、器用に白い紙の部分を残して、青い色ペンで空を描いた。


 空に浮かぶものはいろいろある。子どもの頃、近くに住む女の子とよく遊んでいたけど、その子の空にはたくさんのものがいた。UFOに飛行船、飛行機雲、魔女にカラスにコウモリに、スズメに蝶々。妖精や天使に悪魔にヒーロー。クジラ、魚、花びら、葉っぱ、あとこいのぼり達もいた、大渋滞。


 網戸の外の青い空にも飛行機がラクガキをしていた。

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