第5話 まただ 

 彼女は気づいたらしい。俺は有名人だった悪い意味で。多分俺のことを知らない奴なんていないと思う。それぐらい大きく取り上げられた。

 幼稚園で悪魔と子供を殺した幼稚園生

と。

 俺は深く後悔した。なんでまたこんなことをしてしまったんだ。彼女の顔を見ると体が冷たくなる感じがした。なのに心臓の音は早くなる。俺は膝をつき地面に頭をつけた。もう彼女の顔が見れない。人間を見る目をしていなかった。息が荒くなる。涙が出てくる。

 ふと体が暖かなる。温もりが感じられた。

 

  彼女が俺を抱きしめてくれていた。彼女は震えていた。

 「大丈夫。私がいるから。」

 俺は顔を上げ彼女の顔を見た。

    笑顔だった。  

 いつもの優しい笑顔で俺を見てくれた。

 俺は人間だって思ってくれたのかな。まだ、人殺しと思っているのか。それでも彼女は俺を受け止めてくれた。大丈夫だって。

 俺は誰にだってゴミ当然に扱われた。

 国の人たち

 地域の人

 隣のおばさん

 親友

 みんなから見捨てられた。あいつは人間の皮をかぶった悪魔だって。

 「ありが、とう」

  涙が止まらない。ずっと泣いていた。それを彼女はずっと待っていてくれた。頭をさすりながら。冥、本当にありがとう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る