彼氏と彼女と君達

岸辺海夢

彼女は泣かない

 1日の出来事を日記に書いてみよう。そう決め日記帳を初めて買った。夜、その日の出来事を書いて行く。


 朝6時に起きパンを食べ仕事に行く。昼ご飯は蕎麦を食べた。おいしかった。午後の仕事でミスをやらかし上司に怒られた。悔しかった。こんなことでミスをする自分が許せなかった。怒りが収まらなかったが、なんとか抑えこんだ。今夜は彼とのデートだからだ。はやる気持ちを抑え仕事をこなして行く。待ち合わせ時間の三十分前、会社を出る。ワクワク気分で向かって行った。待ち合わせ場所に着いたのは十分前。まだ余裕があったので身嗜みを整え待っていた。待ち合わせ時間五分前、彼はまだかと待っていた。待ち合わせ時間丁度、彼の姿は見えない。待ち合わせ時間が五分過ぎても彼は現れない。結局その日は現れなかった。


 と、ここまで書いたところで一粒の滴が落ちる。それは日記帳に染みを作るだけだった。

「あれ……?私どうして………」

 何故自分が泣いてるのかも分からず呟く。


 気づくと朝だった。どうやら泣き疲れてそのまま机に突っ伏し眠っていたようだ。

 窓から日差しが差し新しい日が訪れたことを告げる。鳥は鳴き飛び去って行く。人が動き、車が動く。電車が動き、笛が鳴る。いつも通りの何ら変わりない日常が始まる。1人ぽつんと取り残されたように彼女は床に座っていた。


———目元には一粒の滴がついていた。

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