第二十話 自己満足
そもそも俺はなんでこんなことをしているのだろうか。
人の役に立つのが特別好きという訳でもない。全ては暇つぶしで静那を引き取ったところから始まった。
自分の暇も潰せて、孤児を救えるなら万々歳と盛り上がっていたが、じきにまなかが来た。未だによくわからないまなかだが、俺のもとへ来てしまったせいでトラウマを産みつけてしまったことには、申し訳ない思いがある。部屋からも出て来れていないし、前の元気も無くなってしまった。
おまけにその子ら二人を巻き込んで身勝手な異世界転生、二人を放置してロリ龍と二人旅。結局俺は何がしたい?
元々は突如使えるようになったチートを使って自由な暮らしがしたかっただけのはずだ。それが今や義理もないロリ龍を送るために大切なはずの子供を置いて遠出。夜は帰ると言っても昼間は放置だ。
クズのようではないか?そもそもフローリアを送り返すことがそこまで重要か?だが俺は本人が本心ではどこまで親を恋しがっているか知っている。毎晩枕を涙で濡らし、自分は親に見捨てられたのではないかと日々心配していることを。だがそれは、二人を置いてくる口実にはなるのか?
なぜ急にこんなことを思ったのか、それは俺たちが立ち寄った村とも言えないような集落、貧村ローロでのある出来事が理由である。
*
「ここが噂に聞いていたローロか。気をつけろよフローリア、何をされるかわからない。」
「わかっておるキュレア。お主こそ、またおなごに欲情するでないぞ。」
俺の噂はフローリアでも知っているようで、どうやらフローリアの中で俺はロリコンらしい。まあ俺自身、今までそんなことに気を取られる暇がなかっただけで、そうなのではないかと思ってはいたのだが…
「お前、流石に公の場でそういうこと言うなよ。」
いくら俺にも、羞恥心くらいある。そろそろ村の中に入るので、できる限り黙っていてほしい。
「ローロへようこそ旅人さん、向かって奥が宿屋となっております。大した名物もない村ではありますが、ごゆっくり。」
衛兵らしいやつのセリフに驚く。他の町村ではここまでの歓迎の言葉をもらったことはなかった。貧村と言われるくらいなので、どんな人間が住んでいるのかと身構えたが、心は豊かそうで安心した。
「いい人間のようじゃったな、キュレア。」
「ああ、他の村民もああならいいが…」
それ以降も、すれ違う村人は皆笑顔で挨拶をしてきたし、特に不快な思いをすることなく、情報収集を開始した。
元々禁忌扱いされている神龍の話はなかなか聞けないが、俺はとりあえずハーフホ地方最東の荒地、“自然の墓場”と呼ばれる場所が怪しいと踏んでいる。今はまだラールロ地方から出られてすらないが、そこへ向かいながら情報収集をするのが当分の方針である。
ふと、路地裏に死にそうな子供がいることに気づいた。食料などは有り余っている俺たちは、その子に近づき、飯を与えようとしたところで隣にいた爺に止められる。
「あんたら、その子を最後まで面倒見れんのかい?」
最後まで。その言葉の意味を理解するのは早かった。同時に俺は葛藤した。目の前にいるこの子を見捨てるのは容易いが、果たして後悔しないだろうか。
「後味の悪い思いはしたくない。そう思ってるだろ。折角の善意に対してなんだが、あんたの自己満足にこの子を付き合わせるのはやめてあげてくれないか?この子はいよいよ限界だ。この子にとってこの世は生き地獄。死なせてあげたいんだ。」
これは、どっちが正しいのだろう。この爺とて、修羅場を乗り越えてきたに違いない。それほどの風格がある。故に、この爺の発言を戯言と処理するのは少し気が引ける。
悩んだ末、俺は黙ってその場を離れた。
俺は、自己満足という単語に引っ張られていた。俺がしていることは善行ではなく自己満足。それは、俺が今までしてきたことに対して自信を失うには十分すぎる言葉であった。
〜〜〜
なんでこんな話を挟もうと思ったのか謎です。
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