第十八話 行動開始
フローリアを家に帰すにあたって、いくつかの問題が生じる。まずは路銀。今のところ、生活費はかからないし、食事代も村人達が安くしてくれるので金には困っていない状況だが、異国の地へ向かうとなると相当な金がかかると思う。
そこで、恐らくこの世界にあるであろう冒険者をしながら行くという案が浮かんだが、そうするとどうしても少女達を危険に晒してしまう。少女達にも戦う力を身に付けさせることも考えたが、静那はともかくまなかはダメだ。敵と遭遇した時、倒れ込んで漏らしそうだしな。
そこで、そもそも家に帰す必要があるのか考えた。そもそも俺はあの最恐夫妻から期限も何も聞いていない。おそらく頃合いを見計らって迎えに
来るのであろうが、それはいつになるのかわからない。そもそも成龍というのは何歳からのことを指すのか俺は知らないし、フローリアに聞いても「歳とはなんじゃ?」と返ってくる。
そもそも金があれば冒険者などすることなく、龍夫妻の元へ辿りつけるかもしれない。なので、当分は行けるところで金稼ぎ兼自己強化をしていくという結論に出た。
転移を早めに覚えたおかげで遠出をしても帰りは一瞬であるから、問題はない。飯も作り置きができるしな。今の最前線はラルル。とりあえず王都を目指したい。正直放置親のような真似をするのは心が痛いが、危険な地に向かわせる無責任な親に比べたらマシであろう。
*
「やだ。わたしも行く。」
静那が駄々を捏ね始めた。俺とフローリアの二人で行くのが気に食わないらしい。
「俺は静那を危険な目にあわせたくないんだ。これから行くところは楽しいところではないぞ?」
まなかには事前に説明した。こちらも泣きつかれたが、今と同じようなことを言うと、潔く身を引いてくれた。これは信頼されてるってことで、いいんだよな?
「危なくても、いく。」
そんなに俺と居たいのかこの子は。
「あのな、静那、俺は……」
と言葉を繋げようとしたところで、フローリアに遮られた。
「いいかしずな、わらわたちについてくると言うことは、足手まといにはならないということだが、わかっておるか?」
確かに、そういうことではあるが、そんなことを言っても意地でもついてくるだろう、こいつは。
「……ならない。」
「ならわらわと一対一で決闘といこうではないか?」
静那死ぬて。
「上等……」
全然上等じゃない件。
ーーーーーーー
てなわけでやってきました、中庭。片や世界最強の種族神龍夫妻の娘、暴風を司るらしいです。かくいう今も、二対の頭角に、黄色と緑のオーラをそれぞれ纏っており、今にも魔法をぶっ放しそうです。
「最強の神龍の娘たるわらわにかなうとでも思っておるのか?」
「負けない……」
対する静那の方は、何を構えるでもなく、フローリアの前に棒立ちしております。こちらからは勝つ気があるとは到底思えませんが、何か策があるのでしょうか?
「んじゃ、始めるぞ。フローリアはくれぐれも殺さないようにな。」
「キュレア…私負けないのに……!」
静那が泣き目になっている。
「静那もがんばってな。じゃあ、始め!!」
開戦の合図と共にまず行動したのやはりフローリアであった。左右の手からそれぞれ稲妻と突風を繰り出し、静那にぶつけようとするが…
「なんじゃ、それは…。」
静那に当たった瞬間、気配が消えた。魔法をかき消されたように見えるが、空間魔法が得意な俺から見ると、魔法を形成している魔素自体が文字通り消えた。あれこれと考察を重ねていると、突如フローリアの背後に、先程の魔法が召喚された。
「チッ!」
さすがと言うべきか、フローリアは咄嗟の判断で雷魔法を避け、風魔法に当たる。翼があるため風には対応できるが、雷は確実にダメージを受けてしまうからだ。
「静那、そんなスキルを持っていたのか?」
「うん。キュレアをおどろかせたくて、言わなかった。」
かなりのサプライズだったぞ、静那。当たりそうになった時は、思わず空間魔法で位置を入れ替えようとしたくらいだ。
「こしゃくな…魔法が効かないから何よ!」
言い終わるよりも先に手が出ていた。手だけを変化させ、元の龍形態のものにすることで、爪で引き裂こうという魂胆だろう。つーか口調戻り気味だぞ〜
ついさっきまでなら、ここで助けに入っているが、どうやら静那も意地で戦っているようではなさそうだ。先ほども、きちんと策があった。今回は黙って見ているとしよう。
「…だーくねす、しざー」
静那は中二臭いセリフを言うと、どこから取り出したのか禍々しい巨大な鋏を手に持っていた。
「愚かなる罪人への裁き。大蛇鋏〜サーペント=オーダー〜」
またもや俺の中二心をくすぐるようなセリフを言うと、フローリアが蛇によって拘束され、蛇を模したらしい大鋏に切られそうになっていた。
「なんなのだこの攻撃は!」
翼を使い空へ飛ぼうとするが、うまくいかない。地面から生えるように足に巻きついてくる蛇のせいだ。今度は雷魔法を地面に向かって放ち、自分ごと感電させた。蛇が焦げていき、拘束が解除された。フローリアは真っ直ぐ上に飛び立ち、無表情で竜巻を静那にぶつける。
「いい加減…倒れて…。」
静那が鋏で竜巻を切ると、何事もなかったかのように消える。
(今度はどこから来るのだ…)
フローリアは警戒してか、あたりを見回しているが、その警戒虚しく、フローリアを中心に竜巻が発生し、飛行していたフローロアは衝撃に耐えきれず、吹き飛んだ。
静那の追撃を予想してか、翼で身を包むフローリアだったが、静那からの追撃は来ない。
「わらわを愚弄しているのか?」
「違う…ないだけ…。」
中を浮かんでいる相手にとって、ただ横から来るだけの刃を躱すなど容易い。地面にしか、拘束蛇は生やせないようだ。
「なら、上から攻撃すればわらわの勝ちなのじゃ!」
フローリアが真上から静那に襲いかかる。その爪が静那の顔に届こうというところで、静那が負けを認めた。
「私の…負け。」
フローリアも攻撃を当てるつもりはなかったのか、即座に手を止め、静那に話しかける。
「なかなかやりおるようじゃな、静那。ただ、己のスキルについての知識が足りなかったようじゃ。」
静那の敗因は、上空への対処ができなかった点であろう。魔法を撃たれる分には問題ないが、上からの物理攻撃に対処ができなかった。静那にフローリア同等の身体能力があれば別だが、スキルはあっても体力はない。そこは仕方ないところではあるが、旅をするなら体力は必須だな。
「次は…グスッ、負けない…。」
さて、流してはいたが静那のこのスキル、この間の事件に起因するものではないだろうか。俺は他人のスキルを見るような能力は持ってないため、判断できないのが辛いところだ。まなかにも何かしらのスキルがあるのだろうか?まさか少女達にまで力を与えていたとはな。あの神、余計なことを……。
〜〜〜
《???》
・相手の魔式を乗っ取り、操ることができる。
・【嫉妬の鋏】を召喚可能になる。
“
〈嫉妬の鋏の効果〉
・罪技、『大蛇鋏〜サーペント=オーダー〜』を使用可能になる。
・鋏にて突き刺す、または切った相手には、呪詛が永遠と呟かれる。
・スキルの効果を宿すことができる。
・変幻自在。(鋏の形状からは変えられない。)
”
〜この世の全てに嫉妬し、全てを欲した者に与えられし、禁忌の力〜
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます