PHASE 2 :不幸にも黒塗りの軍用トラックに

「やべぇよ……やべぇよ……!!」


 ダッシュボードの上の大量のミニカーやら人形に、白い羽毛でハンドルを覆いスピリチュアルなアクセサリーをミラーから下げた『典型的な』車、


 乗っている若い男も典型的な悪い人相であり、なんなら後ろにズボンを下ろした男に、半裸で涙目の女がいる。



 だが不幸にも彼らはトラックに追突してしまった。


「何してんだ、すぐ発進しろ!!」


「あ、」


「ほら早、」


 ボンッ!!!


 見た目通りの道徳のない行動は、突然の左前タイヤの破裂が阻む。


「えっ!?バースト!?」


「なんか踏んだ……」


「──おいコラ」


 ガン、と続けて聞こえるドアを蹴る音。

 見れば、運転席の前にぬぅ、と立つ背が高い外国人の女が人を殺す目で睨んでいる。


「降りろ。免許持ってるのか?見せろ。寄越せ」


 流暢かつ分かりやすい脅しでなおもドアを蹴る。


「な、なんだよ!ぶつかったのは悪いけど蹴るこ──」


 ふと、窓を開けた運転席の男の頭に、銃口が突きつけられる。


「あーら、蹴るくらいで済むわけないじゃな〜い♪


 まだ弾装に弾残ってるのに」


 前方から出て来た、こういう場面以外で会いたかったモデルのような綺麗な女性の腕には、


 まぁ誰が見てもライフルとしか言えないものがある。


「……は?え?銃……?それモデル、」


 バン!!!


 耳の横で発泡され、助手席の男スレスレをかすめて窓ガラスに穴を開ける。


「本物よ。


 ね?」


 カチャリ、と嫌な音に、気がつけば四方八方を囲まれる。


 銃、銃、銃…………

 名前は分からないが、とにかく銃に。


「…………えぇ……??」


「降りろ。

 早くしろよ」



 最後に、

 運転席の男の前で、あの背の高い外人がバズーカのようなものを突きつけて来た。


 ハイ、イエス、喜んで

 選択肢はなかった……


          ***




「座れ。跪くんだよ、早くしろ」



 男3人と、ついでになぶられてた女性を砂利道に横一列にして座らせるウィプリィ。


「次の更新日が平成31年か……」


 まぁなんの変哲もない免許証であり、名前は確認しても意味がなく、顔が同じ事だけ確認するなりオンリーはそこら辺に投げた。


「あ、あの……ボクら、どうなるんですか??」


「こ……殺すんすか……ひっ!!」


 怯える相手にわざとかにへらにへら笑っている顔でプッタネスカが自分自身であるSPAS15の銃口を近づける。


「ネスカちゃんや、そこらへんにしてくださいな。


 どの道、


 え、と言う3人の男の目の前、手元の携帯の画面を見せるオンリー。


「これ。この記事あなた達ですね?

 死人に人権ないからって、マスコミも実名顔出し報道って、いつの時代も酷いですよね〜??」



 記事には、


『4日N市国道真夜中に追突事故。3人死亡』


 の見出しと、3人の乗っていた車にそっくりなスクラップ。

 オンリーがゆっくり下へスクロールすれば、3人のある日の思い出の写真が遺影のように……


「な、え、ど……?」


「所でいま何日ですか?」


「え、あ……5月4日……」


「何年?」


「に、2016年……」


「今は、2020年です。

 しかも、6月」


 やがて、男達の顔は別の恐怖に変わる。


 自分は、誰だ?


 なんで、ここを運転していた?


 …………思い出せない。思い出すのが怖い。






「あなた達は、」






 目の前にいたのは少女のはずだった。

 だが薄寒い笑みを浮かべる相手は───人間じゃあない。








「もう、死んでいる」







 ああやっと、

 彼らの姿は事故当時の凄惨な姿に変わり、


 ようやく、相手がなんなのかを理解する。




「……あんたら、天使かい?」


「残念ですけど死神です」


「そっか……俺たち死んでたんだ……気づかなかっただけで……」


「残念ですけど、それもちょっと違いましてねぇ……

 もうお分かりでしょう?あなた達は、『3人』で死んだんです」


 じゃあ、と亡者と死神が顔を動かす。




「あなたは、一体誰ですか??」




 ────乱暴されていたはずの、謎の女性。

 その顔は、先ほどまでの反応が嘘のように、忌々しさを隠さずこちらを睨んでいた



          ***

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