作戦記録0番:第2死神小隊「バレットエキスポ」の華麗なる?日常
PHASE 1 :第2死神小隊「バレットエキスポ」移動中
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日本東北某H県N市近くの国道
この時期にしては寒く、田んぼと空き地との間の国道は、霧に覆われていた。
ふと、パッと二つほどの光が見え、霧を突き抜けるように余り日本には似合わないトラックが現れる。
M939A2『ビッグフッド』。
長らく米軍も世話になっている5tトラックが、若干音漏れするカーステレオの激しい音楽と共に田舎の国道を走る。
貨物は、恐らく…………人間だろう。
このトラックは、兵員輸送として良く活躍しているのだ。
いや、
その車体の横には、目立たない色と大きさのエンブレムがある。
フードを被った死神が、M1ガーランド……とマニアが見れば分かるライフルを肩にまるで死神の鎌の様に抱えているエンブレム。
そして中央に書かれた文字は、
『G.W.S.』
乗っているのは、人のようで、人ではない。
***
「パフェちゃ〜ん、ちゃんねるぅ〜♪
ハァイ、皆さん生放送楽しみにしてました〜??
本日パフェちゃんは〜??
第2小隊隊員として、この通り!
任務中でーす!!他セクターの皆さんも任務中??
あ、隊長ー!!視聴中のみんなに何か一言!!!」
「そうだ!みんなチョコ食べますかー?」
前の運転席から音漏れする荷台の中、一人の美人だがどこか垢抜けない感じの少女……いや成人済みなのか分かりにくい顔の女性が、アン◯ンマンペロペロチョコを未開封の箱ごと取り出して言う。
G.W.S.所属死神『FN P90』
銃種:PDW
弾種:5.7×28mm弾
TACネーム:『オンリー』
役職:第2小隊隊長
そして、G.W.S.のジャケットに身を包む彼女ことオンリーの好物はチョコレートだった。
「随分可愛らしいチョコですのね……!
ちょっと食べるのがもったいないかも……」
と物腰柔らかに言いつつ受け取る、柔和な顔立ちと部隊内外では『
G.W.S.所属死神『L85A2』
銃種:アサルトライフル
弾種:5.56×45mm NATO弾
TACネーム:『フェンサー』
役職:第2小隊隊員(非公式役職:突撃隊長)
食べてみると、案外美味しいのか少し驚いた顔になるフェンサーの横で、さっきからカメラの前でマイク越しに喋っていた10代後半らしき少女が膨れっ面になる。
「ちょっとちょっと隊長もフェンサーさんもマイペース過ぎません〜??
これ
後、ド○ンちゃんはもらった!!」
G.W.S.所属死神『デザートイーグル』
銃種:オートハンドガン
弾種:.50アクション・エクスプレス弾|(.50AE)
TACネーム:『パフェ』
役職:第2小隊通信兵
ド○ンちゃんの顔のチョコと同じ表情で動画を映すスマホに自撮りポーズ。
彼女の生配信へスパチャが飛ぶ。
──その頬ににゅと伸びた白い手袋の指に頬っぺたを思いっきりつねられる。
「コラ!一応任務中なんだから!!
ケータイしまいなさい!!何処から情報漏れるか分かんないでしょ!!」
「痛い痛い!!
ちょっとぉ!!ナンブちゃんパイセンひどーい!!」
パフェの隣には、小柄なまだ中学生か最悪……なぐらいにしか見えない見た目の少女がいた。
G.W.S.所属死神『ニューナンブM60』
銃種:リボルバーハンドガン
弾種:.38スペシャル弾
TACネーム:『ナンブ』
役職:第2小隊副隊長
ちなみに、ジャケットの下はまるで日本の婦警さんのような格好であった。
「酷くない!言っても分からない人間には身体で覚えなきゃダメでしょ!?」
「もぉ〜、ナンブパイセン可愛い顔してオツムの中は昭和の日本なんだから〜!」
「昭和で悪い!?
どの道、作戦行動中は余計な電波はださない!!」
言うなり、ナンブは一人、市販のあんぱん(税込100円)を取り出し、500mlパック牛乳(147円)を出して食べ始める。
「……思っていた以上に昭和の
「でしょー?
さっきコンビニでアレ見て、このチョコ買ったんですよー♪」
「た、隊長……ナンブちゃんパイセンと長い仲だからって……」
もはや遠い世界の風習のような光景に、パフェも冷や汗を……
「ペロペロペロペロペロペロ」
いや、もっと冷や汗をかく光景がある!
一人、栗色の長い髪を後ろに束ね、メガネをかけた美人が、
あろうことかア◯パンマンペロペロチョコのア◯パンマン顔の表面をひたすら舐めていたのだ!!
G.W.S.所属死神『フランキ
銃種:セミオートショットガン
弾種:12ゲージ弾|(12GA)
TACネーム:『プッタネスカ』
役職:第2小隊
「ネスカちゃん……何、してんの……??」
思わず、オンリーもドン引きの顔で尋ねると、一度ペロペロする舌を止めてこちらを見るプッタネスカ。
「いやねぇ〜??
私ずっと疑問だったんだよぉ、ペロペロチョコってさ〜?
『ペロペロ』って付いているのに舐めないで最初噛んじゃうじゃーん??
私も今までそうだったんだけど、どうせならペロペロして食べてみようかなぁ〜、って!!」
言うなり再びペロペロを続けるプッタネスカ。
一同、やはりドン引きである。
「言ってる意味は分かるのに何故出来るのかが致命的にわからない……」
「みっともない!!」
そんなプッタネスカの隣から伸びた腕がチョップを叩き込む。
「いちゃーい!?」
「まったく、チョコぐらいまともに食えないワケ?
イタリア製はもうちょっとまともだと思ったけど?」
隣にいる目つき鋭い銀髪と、他の面々と違って仕立てが良さそうなキリッとした黒い衣装と軍帽の一つ『ギャリソンキャップ』を被った彼女、
ついでにそのどこか旧ドイツ軍を思わせる服の下からでも、かなり自己主張しているもう一つの『
G.W.S.所属死神『グロスフスMG42』
銃種:汎用機関銃
弾種:7.92×57mmモーゼル弾
TACネーム:『シュナイダー』
役職:第2小隊隊員
「まったく、チョコに正しい食べ方とかアホなこと言うんじゃないわよ!
隊長も隊長でなんでこんな子供菓子えらぶのよ?」
「でも美味しいよ〜?シュナイダーちゃんも一個どうぞでーす!」
「フン!まぁ貰えるものは貰うけ…………」
と、オンリーからア◯ンパンマンペロペロチョコを受け取るシュナイダー。
赤◯ゃんマンの顔の描かれたチョコを
「わざとでしょ?」
「可愛いの好きだったよね?」
「食えっての!?100歩譲ってそうだとして可愛い顔食えっての!?!?」
「えー、ドイツ第3帝国製のシュナイダーっちは可愛い顔のチョコ一つ食えないの〜???」
う、とその質問に口どもるシュナイダー。
プッタネスカはじめとした期待の眼差しに、不意に一気にチョコを口に突っ込み、目をつぶってモゴモゴ食べる。
「…………おいしいじゃない……!!」
「見ながら食べる度胸はないかー」
「は?たかがチョコですし??
あんたみたくペロペロし続ける気が無いだけですけど???」
「じゃあ私はこのままペロペロペロペロ……」
「ペロペロすなぁ!!気持ち悪いのよぉ!!!」
胸倉を掴まれてもなおペロペロを辞めないプッタネスカに掴みかかるシュナイダー。
周りが面白がっていたり無関心だったりと目に入ったり……な中、オンリーは運転席の窓を開ける。
「二人ともどうぞー!!」
「あらありがとう〜!」
「おぉ……可愛くてなんか芸術的……
これって勲章同然ですよ隊長」
カーステレオで爆音のノリノリな日本のポップスが流れる中、そう言って運転席の短い髪の女性と、助手席の綺麗すぎるぐらいの美人がペロペロチョコを受け取る。
「……むぐむぐ…………うん、おいしい♪」
白い髪に短い髪、中性的な美人顔の彼女は、
G.W.S.所属死神『RPG-29』
銃種:対戦車ロケット擲弾発射機
使用可能弾薬:PG-29V タンデムHEAT弾
/TBG-29V サーモバリック弾
TACネーム:『ウィプリィ』
役職:第2小隊
「甘いのもたまには良いわよね〜♪
でもお仕事だからウォッカがないからこの麦ジュースで我慢なのが悲しいわ〜」
かなり綺麗な美人な方、助手席で缶ビールを開けているのは、
G.W.S.所属死神『
銃種:セミオート狙撃銃
弾種:7.62x54mmR弾
TACネーム:『リュドミラ』
役職:第2小隊選抜狙撃手
「隊長。
さっきからこいつ、ビールとか呑み出しましたよ」
「ちょっとリュドミラさん?
呑むなっていうのはもう無理でしょうけど、それ3本目じゃないですか?」
「ビールじゃ酔わないから大丈夫よ〜!
ウォッカ呑んでないから素面です!」
「……えぇ……??」
同郷の武器の死神にすらどういう理屈か分からない顔されるが、既に4本目を開けている。
「プハァ〜!!仕事前の気つけには良いわぁ〜♪」
「これもう価値観分かんないな……隊長はどうです?」
「糖分はともかくアルコールはなぁ……」
「6%、9%なんて切り捨てちゃえばノンアルコールと同じよ!!
15%からアルコールよアルコール!!」
「違うだろ。良い加減にしろアル中」
「ウォッカ基準は行けないと思いまーす」
「ぶぅぅぅ!!お姉さんにみんな辛く当たりすぎよー!!」
はぁ、とこの5本目に手を出したアル中狙撃銃にため息をつき、ふと運転しつつウィプリィがこっちを見る。
「この辺に、目的地って聞いたんですけど、後どのぐらいですか隊長?」
「ああ、えっとね、
まず多分ここで『事故る』と思うんですけど、」
「ふぁ?」
ガシャン!!
衝撃、ブレーキ、停止。
流石は軍用なので、中身ほど酷くはなっていないが、
今の衝撃で、
リュドミラのビールが2本とも破裂、散乱。
後ろでも取っ組み合いをしていたシュナイダーとプッタネスカは見事に隊長のオンリーを『ぐぇぇ!!』と呻かせる勢いでぶつかってきた。
「
「痛たたたた……!!」
「二人とも被害報告ー、私はダメみたいでーす」
「あーんと……痛いだけ!!」
「同じくよ!」
「…………私のビール」
一瞬、凄まじい寒気を催す様な声が助手席から響く。
遅れて、運転席のウィプリィも、西側製品で唯一のお気に入りを傷つけた相手の方向へ、マフィアやヤクザの様な恐ろしい視線を向けていた
***
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