第31話 悪魔たち

 水術六重丸は再び刀を構え、早乙女の前へ立ちふさがる。


「足はもう限界だ。腕には力なんぞ入らねー。けど、ここで俺がやらねーと、仲間が犠牲になっちまう。だから、俺は足を大地に踏みつけ、お前に立ち向かう」


「くだらない。消えろ」


 背中の樹木が六重丸将軍へと襲いかかるが、その樹木を一閃して斬りはらい、六重丸将軍は一瞬にして早乙女を自分の間合いへと入れた。そして握る水の刀で六重丸将軍の首もとを狙い、横一閃に切り裂いた。がしかし、六重丸将軍の握る刀の水分が一瞬にして早乙女の首もとを覆った樹木に吸いとられる。


「ありえねーだろ……どうやったら、こんな水分を吸収できる!」


 六重丸将軍は再び水で刀を創るも、そう簡単には攻撃できない。


「くそ……。あの植物さえなければ、勝てると思うんだが……。相性が悪すぎる」


 刀を握る手を強くし、苛立ちを少し押さえて深呼吸をする。

 刀を上段で構え、早乙女の攻撃に備える。


『雷神逆鱗』


 雷がとぐろを巻いて空から落下するも、それを六重丸将軍は足から水を出すことにより機動力を手にいれて避けた。

 六重丸将軍は足から水を出して宙を浮き、森を駆け抜け早乙女の背後へ回る、も早乙女の背中に生えた木が伸びて六重丸将軍を襲う。


「『水魔一閃』」


 水の刀で木を切り裂くが、早乙女を倒すにはまだまだ策と時間と力が足りない。


「このままじゃ……」


 と考え込む六重丸将軍の隙を見て、地面から巨大な木が眼を出して六重丸将軍の腹へ直撃する。六重丸将軍は弾き飛ばされ、木へと激突する。


「死ね」


 気絶させたと確信した早乙女は、六重丸将軍を吹き飛ばした木で六重丸将軍の腹を刺す。

 だが、貫通しない。


「『凝水鎧ぎょうすいがい』。全ての攻撃を遮断し、自らの身を護る技。よかったよ。貴様のおかげでまた技が増えた」


 六重丸将軍は自分の腹に当たっている木を刀の一振りで消失させ、ゆっくりと早乙女の方へ歩み寄る。


「さようならだな。どこかの人間。魔人と化すその前に、お前の命を絶とう。『凝水絶縁』」


 六重丸将軍は早乙女の頭部を切り落とした。

 だがその瞬間に、走って早乙女を探していた神野がその光景を目にする。目の前で仲間を殺されたことに激怒し、神野は悪魔となった。


「早乙女ー」


 右側頭部に生えた角に、六重丸将軍の腕は牛の威圧のように震え、神野は右目を真っ黒に染める。

 神野が六重丸将軍へしびれるような視線を送ると、六重丸将軍には電撃が体内に走ったような感覚に襲われる。指先までが電撃に侵され、しびれる体をなんとか動かす、


「まだ……」


「『閃光の一撃』」


 神野は足を光の速度で振り上げ、六重丸将軍の胸から腹を斬り蹴る。

 六重丸将軍は後方へと距離を取ろうとするも、光の速度でついてくる神野から逃れられず、まんまと間合いを詰められた。


「死ね。『雷風』」


 雷が風にのって出現し、六重丸将軍の体へと降り注ぐ。その攻撃に六重丸将軍は悶え苦しみ、そのまま地にひれ伏した。


「まさか、あの女よりも化け物級の悪魔がいたとはな……。そういえばいたっけな。全ての能力を持つべくして持って生まれた男。神野王。まさかお前、神野王か?」


「ああ。ああああ」


 神野は手を刀に変形させ、その刃で六重丸将軍の首もとを貫こうとすた瞬間、カタストロが神野の動きを停止させた。

 糸のように絡み付く樹木に体を束縛され、神野は身動き一つとれなくなった。そしてカタストロが神野の頭部に指先を向けると、電撃が流れるとともに、神野は意識を失った。


「神野王。お前は本当に、かわいそうな奴だ」


 ささやかな願いとして呟くカタストロの言葉は、神野の耳には届かない。

 静寂が空間に流れる中、カタストロは神野と早乙女の体と頭部を持ち、その場から姿をなくした。


「ったく、これだから環境軍は、悪魔に恨みを持ちすぎだ。まあでも、で良かった。これならまだ再生可能だ」


 カタストロは走っている最中に幽体となって戦場に赴いているウッダーを見つけ、電撃を纏うことでウッダーの体を掴んだ。そしてそのままどこかへと向かう。


「さあて、移植手術を始める。ベースは、。そして、

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