第18話 そこにいるもの

私は、友人の古田さんとよくつるんでいた。

遅い夕食をとり、夜12時くらいまでファミレスで喋って時間を過ごしていた。


彼は、見える人である。

彼の家には霊道がある、これは別の機会にでもお話しよう。

帰りがけに古田さんが

「吉野さん、真っ直ぐ部屋に帰るのもつまらないから、ちょっと見ていく」

「なにを?」

「吉野さん、幽霊見てみたいって言ってたよね。

いい場所あるんだよ」


いきなり言われた。

私もまんざらではなく、着いていくことにした。


国道から一本左に入った、普通の道だ。

車を広い路肩に止め、国道方面に戻った。

国道から左折して、100メートル余りの所まで歩いた。

そこで古田さんが、近くのガードレールを指差しながら

「吉野さん、あそこのガードレールの付近にいるんだけど見える?」

私には、暗闇に電灯で、ぼんやり赤く照らされた、白いガードレールが見えるだけであった。

私は、首を横に降った。

「あそこに小学校低学年くらいの女の子が佇んでいるだよ」

私はそう言われたので、さらに目を凝らしたが見えない。

「吉野さん、ジーンズに黄色いシャツ着た子なんだけどな。

見えない?」

「全然、見えない」

「残念だな。

俺、あの霊は結構はっきり見えるから、吉野さんももしかしたらと思ったんだけどな」

続けて

「ちょっと様子を見ていこう」


結構車が行き交う道路だった。

10分位して

「吉野さんわかった」

「何かあったの」

「車の動き変じゃない」

気がつかなかったので、今度は車に注目して見ることに。


確かに、先ほど子供の霊がいると言った付近になると、車が何かを避けるようにハンドルを切ったり、ブレーキを踏んでいた。

古田さんが説明をしだした。

「ほらいま、女の子が車道に飛び出した。

車が避ける」

「また飛び込んだ。

今度はブレーキ」

何度も 子供の霊は、車がくるたび飛び出してるみたいだ。


何事もなく行きすぎる車が殆どだが、10台に1台は何らかの反応をしている。


呆気にとられて見ていると、

「吉野さん、俺もね最初は驚いたんだよ。

よく見ると霊とわかるんだけどね。

10文の1くらいの人は、何かを感じているみたいなんだよね」


次に来た車がガードレールに衝突した。

ゴン

と鈍い音がした。

ドライバーが降りてきて、ぶつかった場所を確認している。

「うわっー!」

っと声を漏らし、かなりしょげかえっている。

仕方なく運転席に戻っていった。

古田さんが慌てた口調で

「吉野さん、吉野さん

後部座席、後部座席」

「後部座席に女の子が乗っているよ」

車が走りだし、私達の横を通っていった。

古田さんが青ざめた顔して

「すれ違った時、笑顔でこっち見てたよ」

「こんなのは初めてだよ。

久々に怖いと思った」


ガードレールのそこには、女の子はいなくなった。

乗せていった車はどうなったんだろう。


3日後、古田さんから電話であの女の子霊が戻ったと聞いた。

再び事故がおこらない事と、

女の子成仏を祈った。










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