第5話 取材先にて(ポンコツ撮影日記2)
テレビの取材で、S市O町の旧家を訪ねた時のお話しです。
由緒ある昔ながらの菓子やさんのご主人に、インタビュー取材をお願いしました。
まずは、江戸時代から伝わる蔵を見せていただき、
古くからある甲冑や刀・文献などの貴重な品々を撮影しました。
特に変わったところもなく仕事は順調に進み、残すところご主人のインタビューのみ。
インタビュー場所は、売り場の一角にある事務所でおこなう事になりました。
カメラ側から見て、ご主人の左側にはお店の様子が窓越しに見えるようセッティングいたしました。
ご主人の右側には、出入り口の扉が位置します。
監督は私の映像をモニターで、食い入るように観ています。
インタビュー終盤突如
ガチャ・ガチャ・ガチャ・ガチャ・ガチャ
と音がしだした。
扉のレバーが激しく上下するのを
私は見ていました。
再び
ガチャ・ガチャ・ガチャ
と扉のレバーが動いた。
そして、扉が少し開いた。
女性の細い指先が覗いていた。
慌てたように扉が閉まる。
突然の異音に収録は一時ストップ。
ご主人が
「失礼しました。」
と言って、
扉の鍵を開けてお店にいる従業員の方達に大きな声で
「インタビュー取材してるから静かにお願いします。」
声をかけて、再び扉を閉めて鍵をかけました。
もう一度言います。
私は見たのです。
鍵がかかった扉が開いたのを!
そして、そこから女性の指が覗いていたを!
扉が開いた時には誰もいなかった。
そんな一瞬で、移動なんてできないのに、いなかった。
私は、背筋が凍る感じをおぼえながら仕事を続けました。
帰りの車中
監督に先ほどの私の見た事を話しました。
監督側から扉は死角で見えてなかったみたいです。
只、扉のレバーの上下する音だけはしっかりと収録されていました。
何だったのでしょうか。
理由はわかりません。
今でも扉のレバーをガチャ・ガチャする音を聞くと凍りつく思いです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます