石蹴りをして遊ぼう。
名島也惟
起
キャハハハ……。子供達の遊ぶ声が聞こえている。
私は目を開けて辺りを見回した。
そうか、ここは神社だった。
境内で子供達が数人、石蹴り遊びをしていた。
私は還暦を過ぎて体調が悪くなっており、最近は入退院を繰り返すようになっていた。
今日も診察を受けてきた帰りに、休める所を探していて見つけた、小さい神社で休憩していた。
最近は、歩くのもままならない。無駄に歳を取りたくないものだ。
私は目の前の遊んでいる子供達を見て時間を過ごしていた。
その子供達の中に、一人だけ服装が違う子供がいる。
服装を見て段々思い出した。
病衣だ。私が入退院している病院の病衣じゃないか。
よく見るとその子は、頬がコケているじゃないか。なんだかしんどそうだし。おいおい、大丈夫か?
私は立ち上がった。病衣の子を止めよう、体調が私から見てもおかしいじゃないか。病院にでも戻らないと——。
およしなさい。
声が私の側で聞こえた。いきなり私は腕を掴まれてしまった。
振り向くと、私より年老いて見える男が、にこやかな笑顔で、かつ威圧的な声で、私の腕を強い力で掴んでいた。
「あなたは?」
私は気付いて、自分の名前を先に名乗ろうとして、
「知っていますよ」男は柔らかい声で答えた。
「そこの国立病院に通院されている方ですね。良かったですね、退院されて」
私が退院した事を知っているのか。私は、目の前の男を改めて見る。立派な紳士の格好。病院の関係者なのか。
なんだか風が強くなってきた。頬に風が当たって痛い。砂だ。風に乗って砂埃が飛んできていた。
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