第二章 初めての嫁

第16話 死霊の森

「ハア、ハア・・・」


虎人族のB級冒険者アリシアは『死霊の森』の魔物相手に苦戦していた。

「くそっ」

4匹のレイスに囲まれてしまっている。

「うらぁ!」

右手のククリナイフを正面のレイスに振り下ろす。

しかし、実体を持たない魔物のレイスには普通の剣は全く効かない。


「くそ、くそ、くそー」

アリシアは両手に持った2本のククリをヤケクソになってブンブン振り回す。

獣人族は人族よりも身体能力に優れるが、魔力は少なくて魔法が使えない者が多い。


「なんで剣が効かないんだー(怒)」

実体を持たない魔物のレイスには(以下略)、獣人族には種族的な傾向として脳筋が多い。

獣人としても飛び抜けて戦闘力の高い虎人族は特にその傾向が強かった。

つまり虎人族の女戦士でB級冒険者のアリシアはちょっとアホの娘気味だった。


『あ゛あ゛あ゛あ゛』

ふわふわと周囲を浮遊するレイスの手がアリシアの身体に触れる。

「ぐうっ」

氷のように冷たい手が触れた箇所から身体が痺れてくる、レイスの状態異常攻撃スキルだ。

物理攻撃力のない死霊であるレイスの攻撃手段は『パラライズ』と『エナジードレイン』だ。


「うわわわわっ」

足を止めてしまったアリシアの身体に4匹のレイスが群がる。


「ぐううっ」

全身が麻痺したアリシアは崩れ落ちるように草地に倒れこんだ、このままでは『麻痺』か『衰弱』で心臓が止まるまでレイスに生命力を吸い取られ、死んでからは同じようなレイスになってしまう。


『急急如律令』

死霊の森に呪文が響いた。


『ぐおおお』

悪霊を祓う呪文だったのか、レイス達が苦悶の声を上げながらその姿を溶かしていく、4匹のレイスは地面に魔石だけを残して消え去った。


テレッテレッテ~♪

『まもののむれをたおした!』


テレッテレッテ~♪

『ヤスアキはけいけんちをかくとくした!』


~・~・~


この世界の獣人の大部分は獣人国に住んでいるが、他のほとんどの国にも獣人は住んでいる。

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