第2話 いきなり四天王

『おい!』

おおっと、ステータスの百科辞典の項目の詳細説明を見てみたら百科辞典(○ィキペディア)は意外と便利そうなスキルだった、現代日本の知識でチート出来るかも?


『おい貴様、いつまで我の事を無視しておるのだ!』

「チッ」

目の前で、げふん、げふんとわざとらしく咳払いとかしてる男?に現実逃避の邪魔をされて、あたしは思わず舌打ちをした、わざわざそっちの方を見ないようにしてたのに。


あたしの前に立つ男は漆黒のローブとフード付きのマントを着て、なにやら魔法の効果のありそうな指輪や腕輪を何個もはめ、右手には杖、胸には重たげなアミュレットを下げたいかにも私は“魔法使い”でございますという格好をしている。


「くっ、『魔眼鑑定』」

あたしは女神から与えられた魔眼スキルを使った、普段は黒いあたしの右の瞳が金色に輝く、ちなみにあたしの『魔眼』は“魔眼”なんて名前がついてるけど只の『鑑定』スキルだ。


『鑑定結果』

名前:不明

種族:魔族

性別:不明

年齢:不明

職業:魔導師Lv52

称号:魔王軍四天王

状態:正常

スキル:不明


おおっと、ファンタジーのお約束というか、相手の方がレベルが高いからか『鑑定』結果が不明だらけだ、しかし、この称号は。。。


「ま、魔王軍四天王・・・(汗)」

諸星 光 17才女子、異世界に転移して早々のピンチだ、死ぬのあたし?


『我こそは魔王軍四天王が一人、最凶の魔導師【魔導鬼】なり』

深く被ったフードの陰になってよく顔がわからない魔族は地の底から響いて来るような声でそう名乗った、怖いわ!


「な、なんで転移した直後に魔王軍の四天王なんかいきなり出るのよー」

あたしは余りの理不尽さに地団駄を踏んだ。


『女神に選ばれし異世界の【勇者】といえど召喚直後ならば大して力もあるまい』

魔導鬼と名乗る魔族があたしが焦ってるのを見て嘲笑う、悔しい。


「『はじまりの村』でいきなり中ボスの襲撃イベントってどんなクソゲー、最初はスライムとかでしょ、普通!」

Lv1勇者vs魔王軍四天王って絶対に設定がおかしい、スタッフ責任取れ!


えーと、魔王軍四天王と戦う方法をネット検索!

『百科辞典(○ィキペディア)!』


検索結果:三件

ルート1:JR環状線 天王寺駅より徒歩…

ルート2:地下鉄御堂筋線 天王寺駅より徒歩…

ルート3:近鉄 南大坂線…

いや、四天王寺への交通案内とかいらないから、あたしが検索したのは四天王の倒し方!

ギフトスキルの『百科辞典(○ィキペディア)』思ったより使えねぇ。


あたしの固有スキルは変装に裁縫。

コスプレ衣装を作るスキルにコスプレするスキル、これまた戦いに全く役に立たねぇ。


使えそうなギフトスキルは“水魔法”くらいか。

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