9話 飲酒配信

あの配信の後、マネージャーから連絡が来た。



「もしもし?」



「どうも、マネージャーです。あのゲーム配信良かったです!あんなにゲーム上手かったんですね!あの人は想像通りだって言ってましたけど…(ボソッ」



「はい、ああいうゲームは得意ですから。で、…どんな用事ですか?…コラボですか?ちょっとドキドキして来たんですが!?」



「はい、コラボのお誘いです。」



「よぉしっ!誰ですか!?」



「あやかしの2人…と言えば分かりますか?」



「あっ…。」



あやかしとは、アナザーズー1期生の、白狐の女性ライバー妖宴 こんようえんこんと、雀の男性ライバー傾義 チュンかしぎ ちゅんのコンビのことだ。


妖宴こんは、狐のランク付けでいう空狐の位に居て、七尾の尾を持っている。飲酒配信を良くするが、ソロ配信だとベロベロに酔ってヤバいこと(寝落ち、配信切り忘れetc…)をし始めることがあるので、酒を飲むのはコラボの時だけにするようにしている。でも酔った時の可愛さは強い。酒飲みソロ配信の時、リスナーの一部はやらかさないか心配して気が気じゃない。


傾義チュンは、めちゃくちゃ性格も顔もイケメン。だが、雀成分は背中の小さな翼だけだ。しかも、雀なのにめちゃくちゃ酒に強い。酔うには酔うが、やらかす事は全くなく、逆に酒を飲んでいない時の方がヤバい。恩を仇で返すというか、違った形で返してくる。傾義の名は伊達じゃない。


この2人の仲はそれはそれは悪く、頻繁に喧嘩をする。ガチ喧嘩にリスナーは焦るが、酒が入れば話は別。仲のいい夫婦のようになるので、リスナーはもう結婚しろと本気で思っていたりする。


俺はたまに切り抜きで見たりして面白い2人組だとは思っていたが、まさか向こうからコラボに誘ってくるとは思わなかった。別にこれから機会があったら誘う予定はあったが。


そんなあやかしだが、



「あの…、ドライで配信するんですよね…。俺、急性アルコール中毒で死んだりしませんよね?」



コラボ相手に大量の酒を飲ませようとする癖がある。あやかしの2人とコラボした相手は確実に二日酔いになり、翌日の配信を休むことになる。ほら飲め飲めと相手をはやし立て、自分達は酒に強いので同じ量飲んでも酔いつぶれない。立場が下の人には圧をかけ、上の人には煽って、吐くまで飲ませるなんて鬼畜な時もある。



「うーん、こっちから忠告はしておきますけど…。一応誰か保険で居てもらった方が良いと思いますね。誰か呼べますか?」



「いるにはいるんです、ちょうどいい奴が。ちょっと連絡しますね。」


───────────────┐

白い

って事なんだけど良い?



くろくま

私の事どう思ってるの?



白い

こういうの頼める唯一無二の存在



くろくま

ならいいか



白い

倒れたら救急車呼んで



くろくま

死んだら霊柩車呼んであげる



白い

俺が死なないために呼んでるんですが?

──────────────────┘



「連絡取れました、くろくまが来てくれます。」



「前から思ってたんですけどくろくまさんとはどんなご関係で?絶対に同級生なだけじゃないですよね!?」



「昔コンビで動画作った仲です。ちょっとした幼馴染みたいなもんかな。そんな隠しごともないですよ?聞かれることは答えますし。」



「お付き合いとかは…?」



「アイツと?流石にそれはないですね!」



「そこまで言うなら良いんですけど…。気になりますね…。コラボはあさっての23時、打ち合わせ無しで行きたいそうですが大丈夫ですか?」



「はい、了解しました。」



「あ、そういえば、敬語使わなくてタメ口にしてくれ、友達とか家族のように扱ってくれ、だそうです。」



「はい、はい!?いいんですか!?」



「敬語使ったら罰ゲーム、だそうです。」



「はい…。分かりました。」



──────────────┐

白い

あさって23時だって、よろしく



くろくま

了解

──────────────┘



黒翳 覆@ooi_kurokaza

 あさって23時、あやかしの2人とコラボする。

 先輩との初コラボだから気引き締めて行く!


 だが酒飲み配信…。

 あの2人と同じ量飲むのは無理なので、

 死なないように頑張る。


 そういえばタメ口OKもらった。

 友達のように扱わないと罰ゲームらしい。


 くろくまにお家に来て貰う。

 孤独死はしないから安心して。

 @235  ↺1921  ♡2932


───────────────

あやかしVS黒翳's?[飲酒配信]

23:00 kurokaza channel

───────────────



コメント:待機

コメント:タメ口OKは気兼ねなく見れるからいい

コメント:ガチで死なないか心配なんだが

コメント:普通は1回飲酒配信して慣れてからコラボに臨むんだよな

コメント:黒翳は2度死ぬ

コメント:っていうかなんでくろくま来るん?

コメント:どんな関係なんだ?

コメント:これってキマシタワー建ちます?

コメント:性別不定と女…。建てろ!



「こんおおい、アナザーズー2期生。黒翳、覆だ!よろしく頼む。」



コメント:いきなりの渋良い声は心臓に悪い

コメント:ドライやんけぇ!

コメント:ん?くろくまどこ?

コメント:くろくまどこに行った?

コメント:…君のような勘のいいガキは嫌いだよ



「は?くろくまなら向こうに居るぞ?くろくまー、おーいくろくま!呼ばれてっぞ!」



「なにー?…え、ちゃんとここに居るよ!どんな関係かって、こいつとは別に変な関係じゃないよ、幼馴染なだけだよ!勘違いするなよ!」



コメント:ダメだツンデレにしか聞こえん

コメント:幼馴染とか最高かよ

コメント:いつからの幼馴染なんだ?

コメント:ヤバい考えがまとまらない



「じゃ、私は向こうで仕事してるから、用があったら呼んでね。頑張って〜。」



「了解。それじゃ、そろそろコラボ始めるか。よし、先輩方、よろしくお願いします。」



「どうも、傾義チュンです!」



「こんばんは、妖宴こんじゃ。」



「よろしく後輩!」



「よろしく頼むの。」



コメント:いつもよりまともな自己紹介で草

コメント:チュンは猫かぶってる

コメント:こんはいつもこんな感じだな

コメント:↑激寒ギャグ

コメント:↑本人もなんだよね



「いや俺元々まともだろ!」



「はい、あやかしの2人が来てくれました。これからよろしく。じゃ、景気づけに酒開けますか。」



「よし来た!俺はストゼロ!」



「わしは焼酎じゃ。」



「我は安定のビールか。」



『プシュ』



コメント:2人趣味、1人生きがいで飲んでそう

コメント:俺も飲みたくなって来た

コメント:俺は飲むぞ(プシュ

コメント:俺も(プシュ

コメント:買ってくる



「酒のつまみってある?ちなみに我はウィンナー。」



「俺はコンビニで買ったもつ煮込みがあるな。」



「わしは親戚からもらった枝豆があるのう。無農薬のやつじゃ。」



「ごくごくごく、かーっ!うめぇ、もつ煮込み合うなぁ!」



「こくっこくっ、ぷはっ、やっぱビールはいい!ウィンナーもパリッとしてうまい。このウィンナー中に肉汁詰まってるな!」



「こくっ、こくっ、ふーっ。焼酎はいいのう、リラックスした時間を与えてくれるのじゃ。枝豆も丹精込めて親戚が作ってくれたから余計美味しく感じるわ。いいのう、もうちょっと待てば酔いも回ってもっと心地よくはずじゃ。」



コメント:腹減ってきた

コメント:コンビニ行ってもつ煮込み買ってくる

コメント:今ストゼロ買ってきたところなんだが

コメント:↑行ってらっしゃい

コメント:↑行ってきます



「ねえ、もう我慢出来ないんだけど。私も飲む。ねえ、冷蔵庫に他の酒ある!?」



「あったはずだが…。貴様我の付き添いだってこと忘れてないか?」



「忘れてない!程々に飲むだけ!キッチン借りるね!」



「お互いにセーブし合おう。そうすれば大丈夫なはずだ。」



コメント:くろくまが誘惑に負けた!

コメント:美味そうだもんな…うまい(モグモグ

コメント:自分でおつまみ作るとか家庭的

コメント:被害者が1人増えた

コメント:今の黒翳時を戻そうとか言いそう



「ごくごく、あ"〜っ"!…っていうか俺達そんなに強引に飲ませてないからな?はやし立てるだけだし。」



「風評被害じゃ。勝手に飲んで勝手に酔いつぶれただけなのに。」



コメント:加害者はいつもそう言います

コメント:俺達もいつもより飲みすぎるからな

コメント:気分良くなるよね



「ごくごくごくごくごく」



「飲む勢いおかしいだろ…。」



「ストゼロは水です。」



コメント:名言

コメント:こいつたまにとんでもないこと言うな

コメント:可燃性の水だもんな…(錯乱)



「まだ夜は始まったばっかだ!まだ飲むぞぉーっ!」



「おう!」 「そうじゃな。」 「仕事進めながら飲む!」



■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□



「うまいのじゃ、しょうちゅうは!だんだんよってきてここちよくなってきたのじゃ…。ひっく!」



「こりゃ酔ってんな…。ダメだこいつ。黒翳ぁ?」



「あぁん?」



「あぁん?じゃねぇよ何があぁん?だ。」



「すーっ、すーっ。」



「くろくまなんてもう寝てやがるぞ?」



コメント:もうめちゃくちゃだ

コメント:これは神回

コメント:通話なのに同じ部屋に居るようにしか聞こえん、これオフコラボ?

コメント:まさか1番にくろくまが落ちるとは

コメント:仕事はどうした仕事は



「よしお前ら限界だな、最後に恒例のジャンケンだ!」



「おぉう!ジャンケンなのじゃあ。」



「ジャンケンん?なんだそれ?」



「知らねぇか、なら教えてやる。ルールは簡単、配信の1番最後にジャンケンして、負けたヤツがもう一口酒を飲む!よっしゃ行くぞー!最初はグー、ジャンケン!」



「グー!」「グーじゃ。」「チョキ!」



「この我が負けた…、だと…?」



「さあ、酒をもう一口飲め!行け!」



「のむのじゃ!きたいしとるぞ?」



コメント:悪い予感がする

コメント:奇遇だな…、俺もだ。

コメント:あれは死神ではなかった



「ぐびっ…、『ガタァーン』!」



「黒翳ぁ!?」

「くろかじゃ!?」

「大丈夫か!?」

「くろかじゃ!」



「しゅぴー、しゅぴー。」



「なんだ、寝ただけか。」



コメント:ガチでビビった

コメント:そうか…、俺もだ。

コメント:多分これ机に頭ぶつけただけやな

コメント:寝息かわいいな

コメント:この配信見てる1割くらいもう寝てるぞ

コメント:↑さっきまで寝てた

コメント:っていうかこれでも性別分からんの草



「くろかじゃにぇたの?」



「おう、寝たっぽいから起こさないであげような?」



「わかっちゃ!」



「普段からこんだけ可愛ければいいのにな?」



コメント:あやかしてぇてぇ

コメント:かわいい

コメント:この酔ってるこん見るために来てる

コメント:本人は起きたら記憶ないけど後からアーカイブ見て恥ずかしがるのも良い

コメント:これ寝たら寝たで配信切れなくね?

コメント:あっ(察し)



「あれ、いつの間に寝てた?あ、仕事…。進んでない…。」



「あ、くろくまさん、配信切っといてくれません?黒翳さん寝てるっぽいので。それじゃ、おつかしー!」



「おちゅかれしゃまなのじゃ〜。」



「よし、それじゃ、最終的に黒翳不在の飲酒配信でした!ばいおおい!」



コメント:ばいおおい

コメント:明日黒翳配信は…

コメント:ないだろうな…

コメント:おやすみなさい



───────────────

黒翳 覆@ooi_kurokaza

 お疲れ様でした。

 あの後ぐっすり寝てました。


 おはようございます。

 二日酔いなので今日の配信休みます。

 すいません。

 @283  ↺2341  ♡3267

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る