鍬を振る

土を耕すのは

自らの内側に問いかけているかの如く


高鳴る期待に副うものがありそうで

覗いてみれば真実は空っぽである


太陽に灼かれながら

虫に喰われながら

鍬を振り 土を盛る


一振り一振りが

自らに突き刺さる


なんのために鍬を振るのだ

生きるためか

生きるためとは違う

生きていることを

実感したいのだ


小さな畑が

とてつもなく巨大に感じる


ここには土しかない

鍬を振る度に土は表情を変える

決して答えてはくれない


ここには静けさしかない

内側に問いかける度におおらかになる

決して怒りや悲しみはない


土を耕すのは

ゆっくりでいいだろう

先に行く者を後ろから眺めている


私は時代にそぐわない

愚か者で構わない


他人には視えない

土の深いところで

鍬を振り

自らと対話を重ねる

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