第8話 村の手伝い
(昨日の井戸で桶をぶつけてきた男か)
その男は10代後半の青年で ほどほどに伸びた茶色のつんつんとした髪が特徴的な男だった
「昨日の人か、たしかナオキだったか どうかしたのか?」
ナオキ「いや、まあ謝ろうと思っててな。色々誤解して面倒ごとにしちまって本当にすまん」
ナオキは深々と頭をさげた
「いいよ別に、おかげで色々知ることができたし。用件はそれだけか?」
俺は正直話も聞かず騒いでたこいつに内心苛立っており、あまり関わりたくなかった。返答もする間もなく扉を閉めようとすると
ナオキ「待ってくれ!!!」
ナオキは足を挟んで扉を閉めまいとする
「なんだ?俺は用事があるんだが……」
ナオキ「長老のとこ行くんだろ?それなら大丈夫だ!旅の準備なら俺にも協力できるし長老なら今朝からどこかに行っちまったぜ?」
「なに!?どういうつもりなんだ?」
ナオキ「だから俺がいるんだろうがよ!とりあえずちょっと来いよ」
(……それならそれで自分の力を検証とかしておきたいんだがな)
ナオキ「まあ来いよ損はないとおもうぜ?」
「はあ、分かった……それでどこに行くんだ?」
ナオキ「急だな~、まずは村の畑に行くぞ!」
「なに!?」
俺はナオキに半ば強引に村の畑に連れていかれた。そしてそこには貧相な畑が広がっており、お世辞にも農作物の質は良いとは言えなかった
ナオキ「ここが畑だ、見ての通り最近は実りが悪い。そしてイナゴに食い荒らされた。そこでだ、お前の使ってた力で何とかできないかと思ってよ」
「俺は旅の準備をしに来たはずだぞ?」
ナオキ「分かってるよ、だがあいにく村にはよそ者に売れる食料は残っちゃいないんでな。あんたが協力して作物が取れれば加工して保存食も作れるし、薬草が育てば苦いが傷薬も作れるぞ」
「材料は自分で用意しろってことか」
ひとまず俺は元気のない背の低い細い草に力を込める。すると力を込めた周辺の草が一斉に伸び始め先端になにやら小さな実がつき始めた。
(固いな……これ食べれるのか?)
そんな思いをよそにナオキが叫ぶ
ナオキ「おおおおおーーーー!!!まじかよ!?お前すげーな!さっそく味見だ!!」
(……そのまま食べる気か?――いや待て俺の力を込めた実って確か……)
ナオキ「いっただっきまーす」
「ちょっと待て!!それは食べるな!!」
俺はあわててナオキの手から身を地面にはたき落とた。
ナオキ「おい!なにすんだ……」
パーン!
ナオキが言い終わる前に地面に落ちた種が小さく爆発した
ナオキ「うお!?びっくりした~ どうなってんだ?」
「やはり俺では食料生産ができないようだ、実はことごとく爆発してしまうんだ」
ナオキ「えええーー!早く言えよ死んじまうじゃねーか」
「死んでないから良いだろ!とにかく俺は力のコントロールが完全にできるわけじゃないんだよ。とてもじゃないけど作物栽培は無理だ」
ナオキ「うーん……いけると思ったんだがな……見た目はこんなに旨そうなのによお……」
ナオキは実や葉を触りながら残念そうにしていた。そんなとき一匹のイナゴが飛んできて草を食べ始めた。
ナオキもそれに気が付いたが食べられない以上イナゴにくれてやることにしたらしい。ふたりでしばらくイナゴの呑気な食事を眺めていると、ふとナオキが言った
ナオキ「なんでイナゴは爆発しないんだ?」
「実を食べてないからな」
ナオキ「じゃあ実以外ならいつも通りの作物ってことか?」
「多分な、だがそこからできる実が安全とは限らないぞ?」
長老「いや、大丈夫じゃろう。」
「!!!」
突然の声にナオトも俺も思わず驚く
「長老!?」
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