武蔵野には八王子は含まれない。

菅江真弓

第1話

武蔵野、武蔵野ねぇ、武蔵野といえば国木田独歩。 ということで、国木田独歩「武蔵野」(もとの題は「今の武蔵野」らしい)を読んでみたところ「武蔵野には八王子は含まれない」だの「西国や東北の人間にはわからない」だの「落葉樹の林はあんまり愛でてこられなかったのではないか」だの言いたい放題言っておる。

 何だこのやろう、とか思い、ややイライラしながらこの文章は書いている。 だいたい国木田(と呼び捨てにしてみるが)お前は武蔵野の出身ではないだろう、とか思いながらちょっと調べてみると、どうやら柳田國男と出身地を間違えていた。 柳田國男は播州の出身で、播州なら里山と田園の風景の中に過ごしていたはずで、落葉樹の趣を愛でてこなかったということはないだろうと思ったのだが。

 しかし、国木田も武蔵野の出身ではない。 銚子の生まれで、広島、山口で育っている。 「武蔵野」の中にも西の方で人となり、なんて書いてあるのだ。

 ところで、私が一番引っかかった文章は「八王子は決して武蔵野に入れられない」なんだが、なんで八王子が入らないかというと多摩川が流れていないから、らしい。 で、調べてみると八王子市には多摩川は流れているではないか。 とはいえ、これは今の行政区分によるもので、国木田の考えていた「八王子」とは違うのかもしれない。

 さて、他に八王子、じゃなかった、武蔵野について調べてみると、武蔵野台地の端の方は武蔵野崖線といって、崖になっているらしい、さらにその崖の上、武蔵野台地の上にはまいまいず井戸といって掘り下げた下にさらに井戸を掘る形の井戸があるようだ。 昔の子供のおもちゃにベーゴマというのがあったが、あのコマを鋳型にして型を取るとすり鉢状の蟻地獄のような形ができると思う。 その形の底に井戸が掘ってあると思えばだいたいまいまいず井戸の形が想像できると思う。 うーん、なんだかとりとめのない文章になってしまったが、国木田に怒っていたのだった。 イライラついでに作ってみた短歌(のようなもの)を最後に載せて、この文章を終わる。


 八王子なぜ入らないまいまいず 草深くともカルマも重し  

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

武蔵野には八王子は含まれない。 菅江真弓 @Keitonodice

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ