【Ⅱ】職業確認
「ねえねえ、ダンジョン攻略ってどうすればいいの? ぼく、ダンジョンに行ったことないから分かんない」
ミザリーは苦笑いを浮かべて、
「うーん、私はダンジョン攻略に参加したことがないから何とも言えないです……」
「アンタみたいなヘッポコ
ツンと嫌味なことを言うシュラは、
「ダンジョンは数多の強力な魔物が存在すると同時に、迷路のように道が複雑になっているのよ。だから大人数で向かって、魔物との戦闘と迷路や罠の攻略の二手に分かれる必要があるの」
「おねーさん、意地悪なのに物知りなんだねぇ」
「意地悪は余計よ!!」
素直にシュラを褒めたつもりだが、彼女からしてみれば余計な一言がついてしまったようだ。
怒鳴られたユウは、しょんぼりと肩を落として「ごめんなさい」と正直に謝る。
まさかシュラも素直に謝られるとは思っていなかったようで、ボソボソとした小さな声で「わ、私も怒鳴って悪かったわ」などと返す。
「だ、だからダンジョンではたくさんの魔物を相手にするから、武器や防具の状態は最高に保っておかなきゃいけないのよ。ダンジョン攻略は何日もかかるわ、いちいち街まで帰ってこないから携行品にも気をつけなきゃいけないし」
「帰ってこれないの? じゃあ、どこで寝るの?」
「決まってるでしょ、ダンジョンの中よ」
ユウの何気ない質問に、シュラはさも当然だとばかりに告げた。
「ダンジョンの攻略が終わるまでは野宿よ。しばらくはベッドで寝れないと思いなさい」
「あらー、そうなんだぁ」
ユウは特に気にする様子もなく、嘆いた様子もない。
本人からすれば、自分が長いこと過ごした無人島のように退屈で不味い食べ物しかない毎日が続かなかければ問題ないと思っている。
ゼノも野宿に対して抵抗はないのか、小声で「じゃあ飯の確保はしっかりしねェとな」と呟く。彼女は能天気なユウの世話と、パーティを組んだミザリーとシュラの世話も考えているようだった。
冒険者としてまだ駆け出しなユウとゼノが、野宿に抵抗がないところを見たシュラは「……え、大丈夫なの? 駆け出しなのに?」と怪しんでいた。
「と、とにかく。武器の修理も出来なくなるから、今のうちに済ませておきなさいよ。今なら武器屋も来てるし」
「ぼくいらなーい。杖のお手入れは自分でやれってゼノに言われてるのー」
「アタシもいいわ。他人に自分の得物を触らせるとか考えられねェ」
シュラの提案を、ユウとゼノは首を振って辞退した。
昔から、自分の武器に関しては自分で手入れをするように言われているのだ。ユウもゼノも、自分の武器は自分で手入れするようにしている。
というより、ユウの長杖もゼノの銀色の
いざとなれば魔法の力で新しい武器の作成ぐらいやってのける所存である。
「まあ、それは個人の自由にしたらいいわ。壊れたら自己責任だけど」
シュラはそう言うと、
「じゃあ次に確認だけど、二人の
「じょぶ?」
「冒険者じゃねェのか?」
シュラの質問に、ユウとゼノは揃って首を傾げる。
少女は「違うわよ」と言うと、
「冒険者の中でも様々な職業に分かれるのよ。私は
「んーと……」
「えー……?」
シュラに促されるままに、ユウとゼノは自分の冒険者カードを確認する。
小さな紙片に細かく書かれた個人情報の片隅に、ジョブという欄がある。おそらく、シュラはそこに書かれた役職のことを示しているのだろう。
「ぼくは賢者だよ」
「アタシは狩人だな」
「どっちも上級職じゃないの!! アンタたち一体何者!?」
シュラは目を剥いて驚いていた。
駆け出しの冒険者が、まさか上級職に就いているとは思ってもいなかったのだろう。そう叫んでしまうのは当然だった。
しかし、二人は上級職の意味すら分かっていなかった。
それどころか役職の概念すらあまり理解しているようではなかった。
「ぼく賢者だって。賢者ってなんだろーね?」
「アタシも狩人だしなァ。今と変わんねェな」
互いに冒険者カードを確認しては、ユウとゼノは笑い合う。
「賢者だってよ。魔法使いに転職した方がいいんじゃねェか?」
「ゼノは狩人が似合ってるね! 弓使うもんね!!」
あはははは、と何でもない様子で笑う二人だが、ユウやゼノの役職に到達するまでに冒険者であればたくさんの実績を積まなければ不可能だった。
仮にも、三日前に冒険者になった程度の新人がなれるようなものではない。
だが、ミザリーとシュラはどちらもユウとゼノの実力について知っていた。
ミザリーはユウとゼノと共に冒険をしたことがあるし、シュラに至っては自分のパッシヴスキルにいたずらされた上に、ふざけた呪文で発動した最上級炎魔法によって大ゴブリンが討伐される瞬間を間近で目撃しているのだ。
笑い合う二人をよそに、冒険者として経験を積み重ねながらも二人の足元にも及ばないミザリーとシュラは、
「ねえ……アイツらは何者なの?」
「さあ……? 私にはさっぱり」
あっさりと上級職であることを明かしたユウとゼノに、二人は若干引いていた。
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