無能だと騎士団を追放されたが、実は演技で無能を演じてました~真の実力は規格外で腹ペコの美女と自由気ままに無双する~

一本橋

騎士団を追放されました

ザシュ、と音を立てて斬り裂かれたアンデッドが倒れる。


俺は騎士団の仲間と共に真夜中の森へアンデッドを退治しをしていた。


※アンデッドとは人や獣などの死体が亡者となった物で、生きている生物に敵対する。


俺は小動物などのアンデッドを剣で倒していると、突然木々から俺よりも大きいアンデッドが現れて俺を襲ってくる。


俺は大きいアンデッドに剣で攻撃するが、アンデッドにはまったく効かずに、俺は反撃を受けて殴り飛ばされてしまう。


「う、うわぁぁ!」


俺は情けない声で叫びながら地面に落ちると、仲間が大きなアンデッドに駆け込んで易々と倒し、俺を見下しながら呟く。


「これだから無能は」


その後も仲間達が次々とアンデッドを倒していくなか、俺は呆然として座り込んでいた。


仲間達が易々とアンデッドを倒していると、耳に響くようなうなり声と共にアンデッドではない野生のティガーが現れた。


※ティガーは虎のような生物で、腕利きの者が十人がかりでやっと倒せる程の強さを持っている。


「おい、無能。囮になってこい」


座り込んでいる俺に隊長が囮になれと言ってきた。

俺は突然のことに動揺して黙っていると続けて隊長が俺に言ってくる。


「無能でもそれくらいは役に立てるだろ、ほら、さっさと囮になってこい!」


隊長はそう怒鳴りながら言って、俺を無理矢理立ち上がらせてティガーの方に力強く押す。


やむ終えず俺はティガーに近付いて囮になるのだが、ティガーは俺に構わずに仲間達へと向かって走る。


「囮にもなれないのか、このクズが!」


隊長がそう叫ぶと、仲間達はティガーと戦い始める。


数分間も仲間達とティガーの戦いは続き、遂に隊長がティガーに剣で止めを刺す。


仲間達はティガーを倒すと喜んでいたのだが、隊長と数人の仲間が俺に近寄って来る。


「スウェル、お前を騎士団から追放する」


隊長が俺を睨みながら、俺を追放することを宣言したのだ。


俺が追放を宣言されたことに困惑していると、仲間の一人が俺を見下し、笑いながら言ってくる。


「お前みたいな囮にもなれない無能は騎士団には必要ないんだよ」


「役立たず、早くどっか行けよ!」


仲間の一人が罵りながら俺を押してきたので、俺は素直に騎士団を辞めることにして歩き出すと隊長が俺に言う。


「着ている鎧を置いていけ、お前みたいな無能が持ってると勿体ないからな」


俺は隊長の言われた通りに着ていた鎧を取り外し、隊長に渡すと仲間の一人が俺に言う。


「早く俺達の視界から失せろよ!」


また、罵られるのも嫌だったので俺は素早く森の奥へと進んで行った。


しばらく森の中を歩いて騎士団が見えなくなったころ、俺は思いっきりガッツポーズを取った。


「やっと、追放されたぁ!」


何故俺は追放されたのにこんなにも喜んでいるのかというと、実は俺は騎士団長にスカウトされて騎士団に入団したのだが、騎士団の仕事は激務である上に休みが少なくて、早く騎士を辞めたかったのだ。


本当は自主退職したかったのだが、これまでに何度も騎士団長に辞めたいとお願いしたが、却下されていたのだ。


そこで、元から騎士団長に気に入られている俺を嫌っていた、団員を追放する権限を持っている隊長に目を付け、わざと無能を演じることで追放してもらうことにして、今に至る。


「は~、ここまで長かったなぁ」


そう俺が呟いていると、目の前の草木がガサガサと揺れると、草木から三匹の野生のティガーが現れる。


うわ、ビックリさせんなよ、騎士団長かと思ったじゃないか…。


そう俺が思っていると三匹のティガーは俺に襲いかかってくる。


「インテンス」


俺はぶら下げていた剣を鞘から抜いて構えると、そう呪文を唱えて魔法を発動し、三匹のティガーを瞬殺する。


にしても、俺よりも弱い奴に無能呼ばわりされるのには、さすがに苛ついたな。


そう思いながら俺は剣に付いた血を振り払ってから鞘にしまう。

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