第八話 実験結果(中編)
その様子を研究所内のウルベは、いささか不機嫌そうな表情でその様子を見ていた。
「・・・・・・・・」
「ウルベ様。数値がどんどん低下しております、いえ、一部はそのままですが、ほとんどの数値が初期の変異前の状態に近付いっ!?」
現状を正確に報告しようとしていたアミーラであったが、自身の上司の様子がおかしいことに気が付き報告を止める。
「ブツブツ(変異に対する肉体と魂の融合・・・肉体の変化に対して人間の・・・血液・・・・心臓部・・・・魔方陣からの魔力吸収・・・サンプル血液濃度・・・血と魔力反応・・・血・・・拒絶?・・・魔力過多・・・いや不足・・・でしょうか)」
「ウルベ様・・・」
上司の反応にどう反応すればいいのかわからず、ただただ見守ることしかできないアミーラ。
「おっしゃあ!!もう片方の腕も叩き斬ってやった!!これでこの野郎はもうまともに動けないぜ!!ま、俺にかかればこんなもんよ!!」
最初に最も怯えていたはずの男がそう叫ぶ。
「ふぅ、いくら脆いとはいえ、一撃が重いから流石に辛かったぜ」
ずっと防御を固めて受け止めいていた男も、冷や汗を流しながらもその表情は先ほどと比べると随分と余裕があった。
「後は首さえ落としてしまえばそれでいい!その後はこんなところとはさっさとオサラバしようぜ!」
「ああ!!」「俺に任せとけってんだ!」
どうやってこの場所を脱出するつもりなのか、扉が開かないことは頭から離れているのか、男達には目の前の脅威にそちらへの意識はないようであった。
「ウルベ様!このままでは実験体が・・・・」
流石にこの状況になって焦ってしまうアミーラ。
ウルベの方を見ると、先ほど以上に不機嫌な表情で苛立ちを隠そうともせずに呟く。
「チッ、よもやこの程度とは・・・アミーラ、すぐに・・・!?」
その時ドラゴンに異変が起こる、急にドラゴンの体が赤く輝きだしていた。
「ウルベ様!「アレ」の周囲の温度が急上昇!!40・・50・・どんどん上昇し続けています!いえ!!それ以上に「アレ」本体の体内の温度は・・・1500度を超えて未だに上昇しています!」
「・・・・・」
「ウルベ様?」
急遽変化した室内と実験体の様子に即座にウルベに報告するもウルベはまたも一人で何事か呟きつつ考え事をしているようであった。
「ブツブツ(体内の温度に対して室内の温度が極めて低い、これはむしろ室内の温度は本来上がらないということか?本来なら本体のみの温度上昇で体内に高熱源体を作り、もしやそれをブレスとして・・・・)」
「ウルベ様?」
どう対処すればいいのかわからず、思わず声をかけたというよりは、つい口に出たような言葉であったが、それにはちゃんと返答があった。
「・・・アミーラ。体内の温度がどこまで上がるのか、その数値は確実に取っておくように。場合によっては他の実験にも応用出来るかもしれませんからねぇ」
「ウルベ様、この部屋がいかに対物理防御方陣、対魔法防御方陣に魔法金属で作られた壁の三重防壁があるとはいえ・・・これ以上この場所に留まるのは危険を伴います、ご避難を」
いかに強力かつ厳重に障壁を施したとはいえ、明らかに不測の事態に陥っていることが明白であったため、自身はまだしもウルベには避難してもらいたいがために提案をするが、それに対してウルベの反応は再度楽しそうに実験体を眺めるのみであった。
「ん~?くっくっく。まぁ問題はありませんよぉ、この数値、この状態ならむしろ多少やんちゃしてくれるのを期待したくなりますねぇ、くっくっく」
「(ウルベ様はああ仰られているが、アレは、危険すぎる、いっそこのまま・・・)」
余裕の表情で見ている上司だが、これまでの動きから実験体の危険性を感じるアミーラ。
だがそれを言葉にすることはなく、ただ見守るのみであった。
室内でも鎧の男たちが異変に気が付いていた。
「なんだ?急に部屋が暑く?」
「うぉい!こいつなんか紅くなってねぇか?」
「確かに。さっき落とした腕と比べても明らかに紅く染まっていっている」
足元に落ちている腕と比較しても、明らかに変化しているドラゴンに不安を覚える一同。最初に仕切っていた男が即座に判断を下す。
「・・・・何かするつもりかもしれん。急いで首を落とすぞ!!」
「あ!暑い!!う・・・ウルベ様ぁぁぁぁ!!熱いですぅぅぅぅ!!もう耐えられません!!!ウルベ様ぁぁぁぁぁ!!!!」
そして扉の傍には変わらずに、自身の上司に何とか助けて貰おうと叫んでいる男がいるのみであった。
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