第17話 魔法
ユートが冒険者組合の前に到着するとそこには既に佇むアルの姿があった。
『ユート、頭のティアラは……』
銀髪の頭上に輝いていたティアラ。それが失われている違和感にアルが尋ねようとするも
「まずは、今日の宿と夕飯よ。教えてもらった宿に急ぎましょ」
と強引に遮られ聞くことも叶わず、仕方なくアルは『そうだな』と頷き女性職員に勧められた宿へとユートを肩に乗せ足早に向かった。
職員に紹介された宿は木造二階建ての客室が三部屋と小さいながらも手入れが行き届いている。紹介があったとはいえ、夜分に訪れたユートとアルの二人を宿の女将は暖かく出迎え、ユートに温かい料理をお腹いっぱいになるまで振る舞い、彼女に温かい風呂まで提供してくれた。
「良い女将さんだね」
湯から上がり銀糸の髪を布で乾かしながらアルに笑いかけるユートに『そうだな』とアルも頷いた。
布団に潜り込み寝ようとするユートの枕元には膝をつきベットの縁に肘をつくアルの隻眼の赤い兜の青い瞳が柔らかな光で照らしている。
『お休みユート』
「アルもゆっくり休んでね。“お休み”」
ただ、寝る前の言葉を交わしただけのはずが、アルは耐え難い眠気に襲われ深い眠りへと落ちていった。先程まで輝いていたアルの青い瞳からは光が消え、慌てふためくユートの耳に規則正しい寝息が兜の口元から漏れているのが聞こえた。
「びっくりした。アル、寝ちゃったんだ。あれ、でも、
ユートの言う通り、生きる鎧であるアルは自らの意思で眠ることはない。例外で精神に直接作用する魔法でなら眠ることもある。あるにはあるがかなり強力な物でなければ基本的に不死者(アンデッド)には通用しない。この場合、無意識にユートが強力な魔法を発動させ眠らせてしまったと言える。この事実に気づいたユートは気恥ずかしげに布団に潜り込み「次から気をつけるからごめんね」と小さく謝罪すると自身も眠りについた。
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