第356話切り抜き視聴配信5

「次が最後の切り抜きになります! デデン! 『シュワちゃん、おしがまテト〇スで実質漏らす【ライブオン/切り抜き/心音淡雪/柳瀬ちゃみ/山谷還】』!」


 これは四期生の加入が落ち着いたくらいの時期だったかな~。

 さて、この時点で既に言いたいことがある。


「体張ってますね~……」


 おしがまとは、おしっこ我慢のこと。

 つまりおしがまテト〇スとは、テト〇スで一位を取ったプレイヤー以外がコップ一杯分の水を飲むという特殊ルールを付与したテト〇スになる。

 これがライブオンだけじゃなくてVTuber業界の文化だったっていうんだから驚きだよね。なみがましなくても涙出なくなっちゃったよ。

 てかタイトルの実質漏らすってなんだ! 私配信中におしっこ漏らした覚えなんてないぞ! 失言ならいっぱい漏らしたけど!


コメント

:今思うとヤバいことやってたんだな……

:黎明期特有の迷企画草

:今もやれ

:伝統文化を途絶えさせてはいけない

:HENTAI文化なんだよなぁ


「この時期まで遡ると、もうほとんど記憶がありませんね」


 ドキドキしながら動画を再生する。


『Smile! Sweet! Sister! Sadistic! Surprise! Service! StrongZero! We are LiveOn! シュワちゃんだどー!』

『一緒にしないで欲しいわね……柳瀬ちゃみお姉さんよ』

『とうとうライブオンにもベビーブームが来ました! 山谷還です!』


 軽妙な挨拶が終わると軽いルール説明があった。今回は最初にトイレに行った人が負けで、トイレに駆け込む恥ずかしい姿を見られてしまうようだ(なんだそれ……)。

 気になるのは還ちゃんのテンションが普段と比べ、異様に高いことだ。


『おしがまですよおしがま! 還はこういう企画をずっと待っていました!』

『還ちゃんはそうかもしれないわね……』

『ちゃんとオムツ穿いてきました!』

『我慢する気ないだけでしょ! 本当に漏らしたら次がなくなるかもしれないからダメよ!』

『そうだど、漏らすのもいいがギリギリでトイレに行くのを眺める、それもまた一興なわけよ』

『淡雪ちゃん、貴方も人のこと言えないわよ。なんでおしがま企画でお酒入ってるのよ……』

『こんな企画素面じゃ無理だどー。そうだ! 負けたら水の代わりにストゼロがぶ飲みにしようぜ!』

『体を張るのは笑えるけど、命を張るのは心配が勝つからだめよ』

『そかぁ……まぁハンデよハンデ! 勝ちまくっておしっこ我慢するちゃみちゃんを楽しむのだぐへへ……』

『ちなみにちゃみ先輩はどういうシチュに興奮してこの企画に来たんですか?』

『……誰かと……テト〇スしてみたかったの……』

『『あっ……』』


 微妙な空気になったところで画面は暗転し、次の場面へと進んだ。

 画面ではテト〇スで熱戦が繰り広げられている。初心者揃いの為、実力は拮抗しているようだ。


『あ~漏らしてぇ~』

『還ちゃんが手抜きしてないか監視する必要がありそうね……漏らして何が気持ちいいのかしら……』

『シュワちゃんも漏らす経験なんてずっとないから分からんね。還ちゃんはいつ漏らしたのが最後?』

『今朝ですかね』

『今朝ぁ!?』

『嘘よね……?』

『ふふっ、どうでしょう』


 始まったばかりということもあり、なんだかんだ楽しそうにゲームを楽しんでいる3人。

 だけどまたカットが入ったと思ったら、様子はおかしくなっていた。


『還ちゃ~ん! コントローラー置いてこっちにおいで~! おっぱいの時間でちゅよ~!』

『ママみがマンマミーア』

『いまだ! くらえ!』

『しまっ!? あ、赤ちゃんを騙すなんてありえせん! 水がぶ飲みするの思ってたよりだるいんですよ! もうオムツ替えさせませんから!』

『いつも替えたがってるみたいに言うな!』

『まずい、まずいわ、着実に体内に溜まってきてるのを感じる! もう負けられない!』


 対戦を重ね、段々と尿意が気になるライバーが出てきたようだ。

 再びカット編集が入る。一番尿意がきつそうなのは――私だった。


『やばいやばいやばい! 漏れる! もうおしっこ漏れる!』

『え、もうそこまできてるんですか? 還普通に勝っちゃいそうなんですけど……そういや途中お酒も追加で飲んでましたよね、ママ卑怯ですよ!』

『卑怯ってなんだこれはハンデだろ! 水飲んでると酔い覚めてきちゃったから仕方なかったんだよ!』

『はぁ、はぁ、あ、諦めてトイレ行ったらどうかしら?』

『そんな……ちゃみちゃんの恥ずかしい姿が見たかったのに……あっ、あっ、あぁ! くうううぅぅぅ……』


 泣きそうな顔でせわしなく体を動かし、尿意を逃がそうとしている私。

 それを見ていると……なんというか……。


「待ってください、これ見てるとなんか私……すっごい恥ずかしいんですけど……なに悶えてんだよ……」


コメント

:いいぞもっとやれ

:おしがまってなんだよって思ったけど……ちょっといいかも……

:今日はこれでいいや

:ヌッ!

:えっちだ……

:紳士が多すぎやしないか?

:ライブオンリスナーは鍛えられてるから


 そして次にカットが入った時には――


『もうダメ! おしっこしてくる!』


 そう言って途端に私の音声がミュートになった。

 ミュートにしたのは偉いけどさぁ……。


「宣言しなくていいんだよなぁ……」


 せめてトイレ行ってくるでよかったじゃん……。

 しかも――


「は、はぁ? なんでここはカット入ってないんですか!?」


 ここまで小気味よくカットが入っていたのに、私がトイレに行っている間はなぜかノーカットで流されていた。

 ちょっと待って、それ私がトイレに行ってる時間バレるからやめてほしいんだけど!?


「早く帰ってこい早く帰ってこい早く帰ってこいーー!!」


 一秒が異様に長く感じる中そう叫んでいると、ようやく帰って来た。

 なるほど、確かにこれは罰ゲームだね、今になって分かったよ……

 でもこれでようやく羞恥も終わ――

 その時、ようやく私は当時の記憶を思い出し、そして気付いた。動画タイトルの『実質漏らす』が何を指しているかを――


『ただいまー!』

『おかえりなさい』

『長かったですね、途中で漏らしたのかもって話していましたよ』

『漏らしてはないけどすごかったよ! 便座に座った途端プシャー!って音立てながら透明なのがすごい勢いで出て、そのまま三十秒くらいは出てたんじゃないかな? あんなに出たの初めてかも、気持ちよかったぁ』


 あ、あ、あ、


「ああああああーーーー!?!? バカバカお前バカ何言ってんのほんっとありえないそんなことまで言わなくていいんだよ!! ごめんなさい汚いこと聞かせちゃってごめんなさいごめんなさい!! ああもうああもう! ンーーーーーー!!!!」


 何食わぬ顔でトイレ事情を暴露した過去の私に、私は顔を両手に埋めて声にならない叫びをあげるしかなくなった。


コメント

:その反応は逆効果じゃない?

:そそるリアクション

:ネタがガチになっちゃったじゃん

:あっ、性癖の目覚めを感じる!

:リスナーまで覚醒させてどうする!

:これは恥ずいwww

:シュワちゃんはこういうとこある。特にこの時期は

:汚くないむしろもっとくれ

:今年はこれでいいや

:確かに体張ってたね

:コメ欄大興奮で草


「はぁ!? ないないないない!! なんで私なんかで興奮してんですか!? こんなの汚いだけですって! そっちこそ恥ずかしくないんですか!? は!? はあぁぁ!?」


 普段と違うガチっぽいリスナーさんの反応を見て、遂にはどうしていいのか分からなくなる私。

 もう企画終わりたい……けど振り返りしなくちゃ……。

 えーと、えーーーっと……そうだ!


「はい振り返り! これだけやらかしてもやってこられたんなら、悩んでる時間があったら配信しようって思いましたーーーー!!!!」


 おしがま、そしてここまでの全ての切り抜きを振り返り、私はそう叫んだのだった。




【あとがき】

次に以前告知したネコマ、チュリリ、匡のマシュマロ返答をやって、その次が最終話の予定です。

マシュマロ募集中なので、よければご協力お願いします。

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