第342話あの心音淡雪が色んなお酒飲んでみた1

「皆様、今宵もいい淡雪が降っていますね、心音淡雪です」


 定番の挨拶をする私だが、今日は初めて挨拶をしたときのような緊張感を味わっていた。


コメント

:遂にこの時が来たか

:本当……なんだね……

:あわゆきいいいいいいぃぃぃぃ!!!!

:え、今来たんだけどこれマジで!?

:淡雪ちゃんが決めたんだから、俺も応援するよ ¥10000


 事前の告知はかたったーで大きな反響を呼んだ。今もコメント欄にはリスナーさんの思い思いの言葉が次々に流れていく。

 ありがとう。その想いを乗せて、私は大声で企画を発表した。


「ライブオン公式企画!! 『あの心音淡雪が色んなお酒飲んでみた』、始まりまーーーーす!!」


コメント

:大草原

:wwwwwww

:公式さぁ……

:公式がライブオン

:酒を飲むだけで公式企画になるVとか清楚すぎるだろ


 自室とは違い、広いスタジオに反響した声に、今回協力してくれるスタッフさんが拍手してくれる。

 今日はなんと! 私1人が主役の公式企画を開催してもらっちゃいましたー!!


「企画の説明に参ります! 本日は清楚系VTuber心音淡雪が、色んなお酒を飲んでレビューしちゃいます! 清楚とはギャップのある企画に驚きの体当たり! 一体私はどうなってしまうのでしょうか!」


コメント

:ん?

:合ってるのに違う

:パラドックスかな?

:ダマスセイソ

:ギャップがあるのはそこじゃないんだわ

:嘘を吐かずに人を騙す天性の詐欺師

:既にどうしちゃったのって言いたいよこっちは


「私お酒はちょびっとしか飲んだことがないので、開始早々ですがすごくドキドキしています……運営さんと相談しながら色んな種類を用意してもらったんですが、全部一度も飲んだことがないお酒なんですよー! 強いお酒とかもあったりして……私大丈夫かな? 少し怖いです……でも大人の世界にちょっとワクワク! しかもお酒ごとにゲストのライバーまで登場します! 運営さん、こんなに豪華な企画をありがとうございまーす! あはははー! 運営さーん! おーい! さっきからなんで笑ってやがるんですかー!」



コメント

:気持ちいいくらい騙してくるじゃん

:ちょびっと(一種類しか)

:VTuberだからって全ての発言にもアバターを通す必要ないんだよ

:無理しないで

:強いお酒の基準絶対9%より上かだろ

:いくつか酒予想できるな

:ゲストまでいるのか

:違う味のストゼロ四種の可能性はないんですか……?

:運営ナイス

:ちょっとキレてて草

:人前で清楚芸するのはずいやろなぁ笑

:スタッフが観客になっちゃってんじゃん

:愛されてんねぇwww


「こほん…………さて、説明はこのくらいにして、企画に入る前に少しお話したいことがあります」


 コミカルに進めてきたが、ここでこの企画をやるにあたってどうしても話したいことがあり、少し真面目な話をする時間をいただいた。

 声色を正し、今度は全ての言葉が偽りなくそのまま届くように、私は話し始める。


「今回の企画、実はだいぶ前から案はあって、でもやるかどうかずっと悩み続けていた企画でした。お酒はストゼロがあればそれで満足していたのもそうですけど、積み上げてきたものが壊れるんじゃないかなって思ってしまって。でも最近、進化し続ける周りのライバー達を見て、私自身もまたどうなるか予想すら出来ないことに自発的に取り組んでいきたいと思うようになりました。情けない姿を見せることもあるかと思いますが、これからも何卒よろしくお願いします。そして最後に、他のお酒を飲むとは言っても、ストゼロは永遠の相棒なのでご安心ください」


 話し終わると同時に、深々と頭を下げる。


コメント

:真面目な話だ

:なるほどなぁ

:成功しても悩みが尽きないのが人間よな

:ビックリしたのは事実だけど、やっぱライブオンは斜め上を行ってこそよ

:こちらこそよろしくお願いいたします!

:お前こそ清楚系VTuberや!

:真面目な雰囲気の中申し訳ないけど、ストゼロ以外の酒を飲むことにこんなに悩んでた人がいるって思うと笑えてくる

:ユニコーンのプルタブを折るって言われてたのは笑った

:プルタブ付いてるユニコーン変種過ぎるだろ

:いい話だったのに最後なんだよwww

:ストゼロと相棒宣言しながら頭下げる人初めて見た

:浮気に見せかけて実質ストゼロとの結婚会見だろこれ


「……さて! それじゃあ最初のゲストとお酒に登場していただきましょうか! ゲストの皆様にはわざわざスタジオまで足を運んでいただけたとのことで、ご協力本当にありがとうございます!」


 さぁ、真面目な話もこれくらいにして、元気に企画の方やっていきましょー!

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