第335話ワルクラ配信4-4

 ダイヤを支払いゲームに移る。まず初めに、くじで順番決めをすることになった。

 結果は先攻が私、後攻がちゃみちゃん。

 それぞれ持ち弾(矢)は三発。それをどれだけ上手く的に当てられたかで点数を競う。


「的に当たると上の点数ボードが光るようになっているのであります。的の中央に当たるとボードの3が光って3点、中央ではないけど的にさえ当たればボードの1が光って1点、的から外すと0点なのであります」

「オーケー。引き分けになったら?」

「そこで終わりであります。もう一度対戦を行う場合はダイヤを頂くのであります」

「ぼったくりに余念がないな……まぁいいや」


 指定の位置に着く。的まで割と距離があるから、弓の落下等を意識しないとダメそうだ。

 弓を構える。それじゃあ一発目、いくどー!


「――――――――はっ!!」


 引き絞った矢が私の想い(性欲)を乗せて放たれる。その結果は――


「的から外れたので0点なのであります!」


 私は思わず机に崩れ落ちた。


「ボケるチャンスを逃した……」

「え、そこなの!?」

「真剣になり過ぎちゃって……」

「それはいいことなんじゃないかしら……?」

「ちゃみちゃん。ボケるとね、当たるんだよ」

「車の話かしら……?」


コメント

:何言ってんねん

:ライブオンは笑いをとればとるほど勝ちフラグが立つから、あながち間違いでもない

:あのシュワちゃんがボケを忘れる程興奮してたと思うと最高に気持ち悪いの草


「ちょっとシュワちゃん先輩! しっかりしてもらわないと困るのですよ~!!」

「心配すんな、次は大爆笑をかっさらう」

「それはスベるフラグなのでやめるのですよ~!!」

「ツッコミ役は頼んだ」

「まだ私に面倒掛けるのかですよ……」

「ちょ、ちょっと! それは卑怯じゃないかしら!?」

「落ち着くのですよ~。射的中にツッコミ入れられても普通は邪魔なだけなのですよ~」

「そ、それはそうだけど……ぅぅ、なんかずるいわ! ずるいずるい!」

「子供か! 分かった分かったのですよ! もしちゃみ先輩が撃つ時ボケるんだったらツッコんでやるのですよ!」

「え/// エーライちゃんが私に突っ込んでくれるの?///」

「それもボケであってほしいのですよ……」


 気を取り直して二発目を構える、今度こそ絶対に当ててみせる。

 弓を構える。そして――


「ここで手振れ抑制のストゼロを注入! ごくっごくっ! んんんんぎもぢいいいいいぃぃぃ!!!!」

「それは逆に手元が狂うのですよ~」

「おらあああああああぁぁぁーーーー!!!!」


 ストゼロで極限まで研ぎ澄まされた体から放たれた矢が大気を貫いていく、その終着点は――


「おお! 1が点灯! 淡雪殿1点獲得であります!」

「噓でしょ……なんであれで当たるのよ……」

「ふぅ、小笑いってとこかな」

「まぁまぁの出来なのですよ~! 次は3点狙うのですよ~!」


コメント

:うっそだろwww

:ストゼロってすげぇんだな……俺も飲んでみた方がいいかな……

:ストゼロ飲んだことない奴、マジで危機感持たなくていい


 よっしゃあ! この勢いのまま三発目いくどー!

 当てたとはいえまだ僅か1点しか取れていない。ここで絶対に中央に当ててみせる。

 弓を構える――


「STRONGモジュール全点接続、エネルギータービン全開、出力80…90…」

「今度は何……?」

「かっこいいセリフ言い始めたのですよ~」

「緊急弁全閉鎖、リミッター解除…!」

「おお! なんだかすごい気迫! これは凄い射撃が見られそうなのですよ~~!」

「100…110…115…レールキャノン最大出力」

「そ、そんなに溜めたら、一体どうなってしまうのですよ~~~~!!!!」

「0%」

「電源落ちとるやないかい」

「あ、中央当たった」

「ええええええええええええええぇぇぇぇ!?!?」


 私の矢がしっかりと的の中央を射抜いたのを見て、ちゃみちゃんが絶叫する。


「ふぅ、まぁこんなところかな。エーライちゃんナイスツッコミだどー」

「シュワちゃん先輩もよくやった方なのですよ~」

「おかしい……こんなの絶対おかしいわ……」

「でもちゃみちゃんも噴き出してたのですよ~」

「しょ、しょうもなさ過ぎて笑っちゃったの!」


コメント

:草 

:外しはしない

:確かに外してはないな

:イケボ過ぎる0%で噴いた

:まぁシュワちゃんなら0が最大出力も納得

:てかエーライちゃんの対応力がエグ過ぎる


「これにて淡雪殿の番は終了であります! 点数は0、1、3だったので合計4点でありますな。還ちゃん、交代時間が来たのでここからは頼むのであります」

「りょーかいです」


 うーん4点かー。

 正直心もとないけど、まぁ相手はあのちゃみちゃんだからね。4点あれば十分でしょ、うん。

 ちゃみちゃんが準備している間、そんなことを思っていたのだが――

 いざゲームが始まってみると――


「エーライちゃん今よ! 突っ込んで! 私にバックから突っ込んで!」

「だからボケろって言ってるやろがい!!」

「惜しい、1点になります」


 一発目、1点獲得。


「真ん中当てればエーライちゃんと……ブへ、ブエへへへへへ!」

「ASMR職人がこんな汚い声出していいのかですよ……」

「エーライちゃん知らないの? 最近は汚いのも需要があるのよ? なんたってオホ声の時代なんだから!」

「興味ねぇのですよ~」

「出し方教えてあげるね」

「いらねぇのですよ~」

「エーライちゃんが声優さんを腹パンして出すのよ」

「収録現場想像して笑っちゃう人が出てくるからやめんかい!」

「今度よろしくね♡」

「出張タコ殴りサービスは行っていないのですよ~」

「あの、還じっとしてることに疲れてきたので、そろそろ撃ってもらっていいですか?」

「あ、ごめんなさい! てや!」

「おぉ、お見事、3点になります」


 二発目、3点獲得。


「ここで当てればデート確定ッ! ねぇエーライちゃん、私陰キャだからよく分からないんだけど、デートってキスまでならしてもいいの?」

「そう簡単に体は許さないのですよ~」

「大丈夫! 女の子同士のキスはノーカウントだから!」

「普通にカウントですよ~」

「ノーカン! ノーカン! ノーカン! ノーカン!」

「ハ〇チョウとキスするみたいになるからやめろ!(バシッ)」

「痛い! あ! 間違えて撃っちゃった!!」 

「…………お見事、3点です」

「!? やったああああああぁぁぁーーーー!!!!」

「ノーカン! ノーカン! ノーカン! ノーカン!」


 三発目、3点獲得。

 私はわちゃわちゃとした2人のやり取りを、ただ呆然と見つめる。

 ちゃみちゃんの合計点数は7点。つまりこの勝負、私の敗北――。

 バタリ。

 私はまたしも崩れ落ちた。


「敵のはずの私が――この2人の絡みをもっと見たいと思ってしまった――」

「おいいぃぃ!? そんなクソザコ覚悟だから負けるんじゃボケエエエェェェ!!!!」


 怒りの声を向けてくるエーライちゃんに言葉もない。私の完敗だ……。


コメント

:なんで射的の技術に関する会話が一切ないのこの人達?

:エーライちゃんも常識がライブオンに染まってきてるよな

:本当にちゃみちゃんにも対等にツッコんであげる組長の義理堅さよ

:園長の前だと本当にちゃみちゃん自由だな……

:ハ〇チョウとハ〇チョウのキス想像しちゃったじゃん


「シュワちゃん! 射的誘ってくれてありがとう、おかげで最高のお祭りになりそうだわ! ほらエーライちゃん行きましょ!」

「はぁ、分かりましたで~すよ~」


 こうして、祭りの喧騒の中に走っていく2人を見送り、射的は終了したのだった。


「おおおおおお!! なんたる歴史的瞬間! まるでアダムとイブの邂逅のようである!!」

「うわ……あ、そこのネコマ先輩、この子よろしくお願いします」

「にゃ!?」


 そこに危ないテンションの匡ちゃんがやって来たので、私も次の場所に向かうことにした。

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