第267話加入完了5
それからというもの、別段大きなイベントは起きないが、小気味のいい会話のリズムが展開される配信が続いた。
騒々しいようで落ち着く――ずっと聴いていたくなる――
あくまでそれは仲良し3人組の日常のワンシーン。だがそれこそが至極のワンシーン。飾らない自然の美しさ。本人たちは自覚がないだろうけど、間違いなくその空間は聖域であった。
やがてお寿司も食べ終わり、揃って温かいお茶を飲みながら一息ついている。そろそろ配信も締めのようだ。
「なぁなぁ、配信の最後になんかエモいこと言おうぜ」
「おお、それはいいな。宮内も最後くらいビシッと締めたいものである」
「ぇ~、いやよ、どうせ後から恥ずかしくなるもの。やるんなら若い2人でどうぞ」
「先生ノリわりーぞー! これから始まる俺たちの黄金旅程の始まりを、今こそ宣言するときだろ!」
「はっ! お幸せなものね! 先生はね、貴方達みたいな世の中の厳しさを知らない能天気なガキが世界で一番嫌いなのよ!」
「信じられるか? これ先生キャラのセリフであるぞ?」
「誰がヨーチューブの広告で流れそうな学園復讐モノ漫画の連載開始から三話でやられてそうな悪役先生キャラですって?」
「そういう漫画見たことありそうなのにタイトルはさっぱり浮かばねぇ絶妙なラインすげぇな」
コメント
:もう終わりかー
:声が少し眠そうで草
:いっぱい食べられてえらい
:そんなこと言ってねぇよwww
:きっと悪事(無免許)がバラされて学校から追放されるんやろなぁ
「なにも臭いこと言おうってわけじゃないんだよ。あれだ、抱負みたいなもんでいいからさ。先生もやろうぜ?」
「まぁそれくらいなら……」
「抱負であるかー……ライブオン浄化とかどうだ?」
「それは匡ちゃん個人の目標だろ……あれだ、開闢の使者になるとかどうだ?」
「勘弁願うわ、そもそもそれ抱負なの?」
「ダガーちゃん、開闢って創世みたいな意味であるぞ……五期生は現状ライブオンで最も遠い存在……」
「し、知ってたし……ごめん、本当は知らなかった」
「もう面倒くさいから世界征服とかでいいんじゃないかしら?」
「それ俺賛成! 流石宇宙人はスケールがでかいな!」
「どうせ無理でしょうけど」
「志は小さいな……」
「宮内は却下であるぞ。世をクリーンにしたい宮内の方針と正反対に思える」
「皮肉的視点から見れば征服も浄化も同じよ」
「実は先生はヨーチューブのショート動画に未だに適応できていないことバラすであるぞ」
「只今バラされたわよ!!」
コメント
:意味を理解せずにかっこいい言葉を使うと大抵失敗するから……
:カオス一族なのは認めるで
:臭いじゃなくて草いだった
:ショートとか導入されてから結構経つだろwww
:年を取ると新しいモノについていけなくなるものなんじゃぁ……
頭を悩ませながらもやはり楽しそうな3人。微笑ましいなぁ。
――微笑ましいか、ふふっ。
何気なく眺めながらそんな感想を持った自分自身に少し笑ってしまった。
そっか――やっぱり私はもう大丈夫だ。
彼女たち五期生のやりとり……そのまるで一つの家族のようなやりとりは、昔の自分が見たらもしかすると直視することが出来なかったかもしれない。
でも今はただただ純粋に受け入れることが出来ている。それがなんだか嬉しいようなくすぐったいような気がして、気が付けば笑っていた。
「じゃあいいか? せーので言うぞ?」
「分かった匡さん? 今度こそ貴方も言うのよ?」
「分かっている、今回は意見が一致したんだから言わない理由がないのである」
そんなことを考えている内に、どうやら話が纏まったようだ。
3人はせーので声を合わせ――
「「「ライブオンに新しい旋風を巻き起こす!!!」」」
そう宣言したのだった。
きっとこれからもハチャメチャな日々は続く、いや人数が増えた分更にカオスな日々になるだろう。
笑いも事件も感動も新しく生まれる、ライブオンでのライバー生活は本当に退屈しない。
そして――なによりそれが楽しみで仕方がない。
新たに入る五期生――そして今まで絆を結んできたライバー達――皆が日々と共に親愛を重ね、もっともぉっっっと最高な箱になるといいな。
さぁ、ライブのスイッチは常にオンでいこう!
……あっ、いや今のは言葉の綾であって、配信をずっと切り忘れていようという意味ではないのであしからず……。
【あとがき】
これにて五期生加入編終了ですね。
次回淡雪のマシュマロ返答で、その次は晴のマシュマロ返答予定です。
近況ノートの方からマシュマロ募集中ですので、ぜひご協力ください!
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