第236話宮内匡VS朝霧晴&シュワちゃん1

 匡ちゃんがデビューしてから約一週間のことである。

 この期間中、匡ちゃんはソロ配信に注力していた。どうやらまずは同じ考えを持つ仲間、彼女の言うところの同志を増やすことを最初の目標にしたようだ。

 あのデビュー配信の後、アンチライブオンがトレンド入りしたこともあって、多くの注目を集めている匡ちゃん。当然配信には人が山ほど集まり、その度に彼女はあらゆる方法で自分の思想を伝えていった。

 増え続けるファンに自信を付けたのか、匡ちゃんは配信で「時は満ちた!」と開口一番に言うと、とうとうライブオンライバーの説得へと挑むことを宣言した(ちなみに増えたファンの中には同志以外に匡ちゃんのおもしろキャラに惹かれただけの人も多いだろうけど、本人は気にしていない、いつかの同志とのこと)。

 まぁ私たち風に言うならコラボをすることにしたということだ。ここまでで一週間。

 そしてコラボ先との予定を合わせ、いよいよ迎えた今日、匡ちゃんの初陣。


「皆の者、ごきげんよう。偉大なる宮内家の一人娘にしてアンチライブオン、宮内匡だ。今日は待ちに待った戦いの日である。ライブオンをクリーンにするため、どうか同志であるリスナーさん達も応援してほしい。それでは……敵を呼ぼう」


 対戦相手はこうだった。


「やほやほー! 皆の心の太陽にしてライブオンの原点、朝霧晴の日の出だー!」

「プシュ! ごくっごくっごくっ、あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛! なんかシュワじゃないと倒す意味がないとか言われたんでストゼロガンギマリ! ライブオンのアイツ、シュワちゃんだどー!」


コメント

:対戦ありがとうございました

:負けイベントじゃん

:無双竜機ボルバルザ〇ク

:どうやったらここまで人選ミスできるの?

:なんで初戦からラスボスと裏ボスを同時に戦おうとしてるのこの子?

:流石ミヤウチィ! 俺達の想像を超えるぜ!

:ダ〇まちの迷宮を下から攻略しようとしてる女

:アンダ〇テイルと間違たのかな?

:おんなのこ

:ダークエルフ

:クジンシー

:漆黒の騎士

:ベアトリクス

:シュワちゃん絶対飲めるの喜んでるでしょ


 私が言うのもなんだがこの子はおかしいと思う……。


「ふっ、すたこらと逃げなかったことは褒めてやろう。だが今まで悠々と楽しんできた悪行も今日で最後だと覚悟するんだな! 晴先輩! シュワちゃん先輩!」

「あ、先輩呼びしてくれるんだね、意外」

「ライブオンでは先輩呼びが推奨されているからな! ルールは守らなければ!」

「私ってやっぱりさ〇なクンみたいにシュワちゃんまでが名前扱いなんだね、あとシュワちゃん様と呼べ」

「シュワちゃん様! これでいいか?」

「ごめん、先輩のままでいいよ。匡ちゃんはいい子だね」

「当たり前だ! そして貴様らは悪い子だ!」

「うん、なんだか今のやり取りで自分がどれだけ汚れているかを知ったよ」

「勝った……パパ、ママ、宮内はやったよ……」

「シュワッチ!? なに負けそうになってんだ! ライブオンの危機なんだぞ!」

「おっといけねぇいけねぇ、我が家を守らねば」


コメント

:ええ子や……

:裏ボスが寝返るな、ダ〇クドレアムか

:1ターンキルされたから仕方ないね

:パパママ呼びなんすね、かわいい

:てか本当になんでこの2人を選んだんや……


「ふっふっふ! なぜこの2人か? よく考えるのである! 他のライバーを正しても、大元であるこの2人を倒さなければまたすぐ悪に堕ちるぞ! まずは大元の供給源を断ち切ってから他のライバーを説得しなければ意味がないのだ!」

「あのー、晴先輩が大元なのはそうだけど、私はそうじゃなくね? 私三期生だど?」

「自分のしたことを覚えてないのか貴様は!? 貴様が本気を出してからというもの、まだ比較的マシだったライバーもことごとく悪に染まり、ライブオンのカオスさは決定的なものとなっただろうが!」

「いやーそれほどでもないっす」

「褒めてなーーーーい!!」


 いい反応してくれるなぁこの子。リアクション芸人の才能があるかもしれない。


コメント

:考えたなミヤウチィ!

:最初の一歩が全体の半分の別解釈

:ライブオンに起こった事件のほとんどに絡んでるからなこの酒

:そして今日匡ちゃんも……



「そんなわけはない! 宮内は明確に敵対しているからな、今までのライバーと一緒と思っては困るぞ」

「……ねぇ晴先輩? 今更なんですけどなんでこの子採用しようってなったんですか?」

「んー? 最近は私もライバー活動を重視してるから今まで程は関わってないよ? 最終確認くらい」

「最終確認したってことは、一応選定に関わってはいたんでしょう? いや今のところ正直危機感はないですけど、一応アンチって言ってますからいいのかなと……」

「私の上腕四頭筋がイケるって囁いてたんだよ」

「それどこの筋肉ですか? 晴先輩カ〇リキーだったりします?」

「ふはははは! 宮内にチャンスを与えたこと、後悔させてやるわ! 今日はしっかりと話し合って貴様らの悪行を正してやるからな!」

「「わー平和的」」


 こうして、匡ちゃんとの対決の幕は切って落とされたのだった。

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